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vol.10 ジェノミックヘルス株式会社 (Genomic Health,Inc.) | 入居企業の声
ジェノミックヘルス株式会社 代表取締役 ジェフリー・J・ヘイゼマー氏

※インタビュー当時の役職

乳がんの「過剰治療」をなくすためにできること、個別化治療への大きな一歩、ジェノミックヘルス代表取締役が語る、乳がん治療の未来

現在、日本国内で女性の12人に1人が発症するとされる乳がん。その疾患率は年々増え続けている。国立がん研究センターによると、乳がんの5年生存率は9割超。治りやすいがんとされている一方で、進行した状態で見つかると、5年生存率は3割程度と低くなるのが特徴だ。

乳がんといっても、その種類は様々で、それぞれの種類に合った有効な治療法が存在する。逆に言うと、判断を間違えればその患者にとって有効とはいえない治療を施してしまうこともあるのだという。

そうした課題を解決する目的で開発されたのが、乳がん検査「オンコタイプDX(Oncotype DX ®)」だ。この検査は、10年以内にがんが再発するかどうかを、21種類もの遺伝子を解析し、確率を予測するというもの。結果は再発スコアとして0~100の数値で点数化され、この数値を基にして患者に“最適な治療”を選択させることができるという。

「乳がん治療には課題が多い」

そう語るのは、オンコタイプDXを提供するジェノミックヘルス株式会社、代表取締役のジェフリー・J・ヘイゼマーさんだ。

「乳がん患者の中には、手術後の治療として抗がん剤を施さなくてもホルモン治療のみで十分に再発を予防できるケースが多いことが分かっています。しかし、その判断は非常に難しく、結果として“必要のない化学療法”を施してしまうこともしばしばあります。そうしますと、当然、化学療法が副作用として患者の体を蝕むことになります。浸潤性乳がん罹患者の半分以上を占める早期・ホルモン受容体陽性・HER2陰性・リンパ節転移陰性(又はリンパ節転移陽性1〜3個)の患者の場合、化学療法の恩恵を受けられる患者は5%以下とごくわずかです。しかしながら従来の治療決定基準を基に判断をした場合『念のために』と化学療法を選択するケースが非常に多くみられます」(ヘイゼマーさん)

オンコタイプDXは、早期の乳がんに対する過剰治療の防止と至適治療に世界でもっとも貢献している検査だとヘイゼマーさんは胸を張る。事実、世界で70万人を超えるがん患者の治療方針決定の指針として同検査は利用されており、その効果はすでに各国の医療業界で認められているものだ。しかし、日本では保険適用外で検査費用も40万円超と高額のため、まだまだ一般には浸透していないのが実情。ヘイゼマーさんは「本当に必要な人たちにこのサービスを届けたい」と訴える。

「がんは研究領域が多く残されている病気です。今後、治療法はより多様化し、特殊な医薬品や機器を使うことになります。そして、新しい治療技術が誕生するに伴い、国はがん治療において何を取り入れ、何を取り入れないか、取り入れる場合はどの患者に適用を認めるかという取捨選択を迫られることになります。しかし現状、日本に限らずどの国にもそうした国内の医療事情をマネジメントするシステムがあまり発達していないため、膨れ上がる医療費に頭を悩ませています。技術は進化しても、運用ができなくては意味がない。このあたりも、がん治療をめぐる世界的な課題と言えるでしょう」(ヘイゼマーさん)

ジェノミックヘルス株式会社に入社する前から、医療業界を中心とした経営コンサルタントとして国内外で多くのクライアントの事業を成功に導いてきたヘイゼマーさん。そんな彼がジェノミック・ヘルス・ジャパン合同会社(当時)の業務執行者として東京・丸の内の「EGG JAPAN」に拠点を置いたのは2014年夏頃のこと。当初は一人用のブースのみの利用だったが、人員の増加に伴いEGG JAPAN内のより広いオフィスへと移った。

「当社には国内外から多くのお客さまがいらっしゃるので、丸の内というアクセスの良い場所にオフィスを構えることは大切なことでした。特に海外から本社の人間や医師が来る場合、東京駅に近いということは非常に好都合です。また、今後人員が更に増えた際には、より大きなオフィスを紹介してもらえるフレキシビリティも大きな利点ですね」(ヘイゼマーさん)

乳がん治療の未来のため、そしてひとりでも多くの女性を苦しみから解放するために。EGG JAPANを拠点に、ヘイゼマーさんは今日も国内外を奔走する。

ジェフリー・J・ヘイゼマー氏

オーストラリア・パース出身。一橋大学、西オーストラリア大学を経て都内の企業に就職。その後1987年に渡米し、1989年スタンフォード大学にてMBAを取得し卒業。ヘルスケアやITベンチャーの多く集まるサンフランシスコベイエリアでビジネスを学び、ビジョンケアの企業と医療機器メーカーのガイダント社で勤務。その後、日本に戻り、コーディス・カーディオロジー・ジャパン(ジョンソン・アンド・ジョンソン株式会社)マーケティングディレクター、アボット・バスキュラー・ジャパン代表取締役社長、フジ・レスピロニックス(蘭フィリップス系列)執行役員・営業本部長等を経験し、現職。

2000年、「遺伝子革命の潜在力を活かしてがん治療への『フリーサイズ』的アプローチを排除する」というミッションを掲げ、カリフォルニア州レッドウッドシティにて創業。
2004年から乳がんの再発リスクをスコア化する「オンコタイプDX(Oncotype DX ®)」をアメリカ国内にて販売。2007年よりヨーロッパや日本でも提供を始める。

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