The Making of

イノベーションプレイス
EGGを作る人の想い

EGGはさまざまなクリエイターが集まるイノベーションプレイスです。その施設の図解を画家の塩谷氏に描いていただきました。完成までの5ヶ月の過程や想い、EGGスタッフの声を記事としてまとめています。図解とともに、塩谷氏による記事もご覧ください。

塩谷歩波

記事執筆・図解制作
画家:塩谷歩波

生まれ変わった「EGG」を知ることから

世界有数のビジネスエリアであり、東京だけでなく日本経済の中心ともいえる丸の内。そのただ中にある新丸ビルのスタートアップ向けビジネス支援施設「EGG」の図解を担当いたしました。
三菱地所が運営するEGGは、主に海外成長企業を対象とし、日本進出の支援を行うなど事業成長の拠点となっています。

EGGの始まりは2000年。丸の内エリアからベンチャー企業を数多く輩出することを企図し、EGG JAPAN の先駆けとして丸の内フロンティアが誕生しました。その後、2007年に新丸ビル10 階に EGG JAPAN が開設され、2013年には9階に拡張。さらに、2022年11月には、EGG JAPANをEGGに改称、増床リニューアル・リブランディングを行い、全体で約570坪だった敷地は約690坪にまで広げられ、施設共用部も充実し、採光を意識した開放的な空間へと生まれ変わりました。

EGG10階ラウンジエリア

EGG10階オフィスエリア

9・10階の2層から構成されるEGGの10階は、ラウンジエリアとオフィスエリアに分かれています。ラウンジエリアはカフェ、イベントスペース、ミーティングルームを内包した大きなリビングのような空間。カフェでコーヒーを飲みながらお喋りを楽しんだり、外部の方を招いて打ち合わせを行ったり、イベントを開催したりと交流が生まれるエリアです。オフィスエリアは個室と複数の会議室・フォーンブース含む共用部で構成されていて、集中して作業をできる場もあれば、Tea Point(飲食可能なカウンター)等息抜きをできる場もあり、それぞれのワークスタイルに合った働き方が出来ます。一つ下の階の9階は、個室とラウンジ含む共用部で構成された木の温かみが特徴的なエリアです。

建物だけでなく、利用する方の人となりも

2022年の中旬、三菱地所の方からリニューアルに際してEGGの図解を依頼したいというメールをいただきました。
建物の魅力だけでなく、そこで働いている人や利用している人の思いや、人となりが伝わる絵がほしい。ハード面だけでなくソフト面の居心地の良さも提供していること、EGGに豊かなコミュニティあるということを絵を通して伝えることで、そこに入りたいと感じる人を増やしたい。そんな思いを受け取りました。

メールを拝見してとても嬉しく思いましたが、今まで制作したことがない大きさの床面積であること、大手企業さんからのご依頼であること、日本国内の方だけでなく海外の方の目にも触れることなど、同時に責任の重さを感じられました。しかしながら、私の絵に魅力を感じ信じて下さった方の期待に応えたいと強く思い、責任へのネガティブな感情を振り払い、EGGのみなさんのお話を伺いながら進めてまいりました。

EGGをつくる方々の思い

リニューアルを担当した平口さん、池田さん

EGGリニューアルを担当した、三菱地所の平口慶幸さん(左)池田麻衣子さん(右)

お二人は施主兼プロジェクトマネージャーとしてリニューアルに関わっていました。具体的には、プロジェクトの予算確保や管理、営業の方達と連携した企画の提案、設計士と施工会社の選定など多岐に渡ります。

イギリスのデザイン会社March and White Designと共に進めてきたリニューアルの中で、お二人が大切にしてきたことがいくつかあります。まず、東南西に面する窓から見える景色を活かすこと。EGGのある新丸ビルからは、東に東京駅、西に皇居、南に行幸通りを望むことができます。個室を使う人だけでなく共用部を使う人もその景色を楽しんでもらえるようにプランを検討したそうです。

次に、全ての個室から窓が見えること。以前は長い廊下があって左右に個室がある構造で、窓に面したお部屋の廊下側の面は壁になっていましたが、リニューアル後は廊下をまとめ、かつ全面壁ではなく上半分をガラスにすることで、内側のオフィスの方も外光を感じられるようにしています。

最後に“家にいるよりもオフィスに来たい”と思える居心地の良い空間作り。リニューアルを検討する段階からコロナが流行し始め、工事が進むに連れテレワークが定着するようになりました。そこで、家よりもオフィスで仕事がしたくなるように、他のサービスオフィスだけでなく家に負けない空間作りも意識されていました。

EGGは入居企業さんだけでなく、The M Cube(旧21cクラブ、2002 年に発足した三菱地所が運営するイノベーションコミュニティ)の会員もラウンジエリアを拠点として活動をしているため、ロンドンの老舗会員制クラブ「アーツクラブ」の設計実績があるMarch and White Designに設計を依頼したそうですが、彼らの実績の一つである高級マンションの知識も空間作りに活かされています。

10階がリニューアルオープンしてから約1年。今後のEGGへの展望を伺うと「新丸ビルのコアは9・10階。特に9階にはコンビニや共用部が集まっていてみんなが集まるハブになっています。そこにかっこいいオフィスがあってイノベーティブな企業が集まっているという認知が広まれば、さらに色んな発展性があると思っています。」と答えてくれました。EGGには施設内のみならず、ビル全体へと広がる可能性がまだまだありそうです。

運営チームの高橋さん、国本さん、森田さん

つづいては、三菱地所の高橋ひろみさん(左)国本理央奈さん(中央)森田志織さん(右)。3人はEGGの施設がスムーズに動くように運営を担っています。具体的には、EGGの設備管理、潜在顧客の紹介やPR支援等入居企業さんの事業支援、入居企業さん同士が繋がるようなイベントの企画など。お仕事内容は多岐に渡りますが、まとめると“スタートアップの方が丸の内を起点に、より事業を拡大してもらうための環境を整えるお仕事”とのことです。

高橋さんは10年前、国本さんは4年前、森田さんは5年前からと、みなさんは長い時間をかけてEGGに関わってきました。リニューアル以前のEGGの姿も知っているみなさんにとって、リニューアルオープン後のEGGはどのように感じているのでしょうか。普段お使いになる場所も含めて伺いました。

高橋さん:

「全体として明るくなって、お客様もイキイキしているように感じます。今までは偶然出会ってお話しできる場所がなかったので、Tea Pointのような共用空間で入居企業さん同士がお話ししている様子をみると、自然なコミュニケーションが生まれてよかったなあと思います。私はオフィスゾーンのソファでお客様とお話しすることが多いですね。気軽に話せる環境で気に入っています。」

国本さん:

「以前はイベントスペースと共用部が同じ場所だったので、イベントを行うと共用部が使えなくなってしまいました。また、入ったらすぐ壁があったので少し閉塞感も。リニューアル後はとても開放的になって、共用部で仕事をしている入居企業さんが増えました。アフターコロナでさらに増えた印象があります。私自身はオフィスエリアのTea Pointにいることが多くて、企業さん同士がお話しをしていたりご飯を食べていたりと色んな使い方をしている姿が見れる場所ですね。」

森田さん:

「施設自体に劣化を少し感じていたので、リニューアルをして開放感を感じました。また、個室もガラス貼りとなって外からでも誰が来ているのかが分かりやすくなったのも良いポイントです。私はよくイベントスペースにいますね。オフィスエリアから出てきた人に声をかけられるし、誰がきたかもよく見える。話しかけられやすく、話しかけやすい場所です。」

リニューアルを経て、開放的で交流しやすい場となった新たなEGG。今後、この場所でさらにどのようなことをしていきたいのでしょうか。

高橋さん:

「海外の企業さんが日本に進出するならまずEGGだよねといってくれるような魅力ある空間を作っていきたいです。」

国本さん:

「多種多様な交流を生み出すことでここにしかない出会いを作りたいと思って入社しましたが、今はまだ作っている最中。イベントなどで入居企業さん同士を繋げていますが、もっと柔らかな空気で自然と話せるような場づくりをしていきたいです。」

森田さん:

「以前より交流しやすくなったけれど、まだぎこちない面もあるし9階と10階で分断してしまっています。そこが自然な形で一体の雰囲気になることが理想です。」

入居企業さんのお困りごとだけでなく、お仕事の悩みや日々の様子に寄り添い続けるみなさん。お仕事のやりがいを伺うと、「特定の部署·役職でなく入居している企業の従業員皆さんと接することができて、“ありがとう”と直接言ってくれて、その方達が過ごしている姿を見るのが幸せ」と仰っていました。リニューアルをして環境がよくなったからこそ、そこに甘えるのではなくて、さらに心地よい繋がりを持つ場所を作ろうとする姿勢がとても素敵に感じられました。

コミュニティコーディネーターの若松さん

EGGにて『コミュニティコーディネーター』の役割を担う若松悠夏さん。EGGを利用する方々が、ただ場所を使うのではなく、ここで繋がって新しいものごとを作り出すために、コミュニティを活性化させるサポートをしています。普段は、利用する方のお話を伺ったり、ランチ会やイベントなど沢山の人が集まるきっかけ作りや、イベントの参加者さんを結びつける活動をしているそうです。

若松さん:

「この仕事は誰とでも話して良いことにやり甲斐を感じます。スタッフの方も利用される方も面白くない人はいなくて皆さん尖ったものを持っている。生きているだけでは絶対に巡り会わないような方と沢山会えるのがここの魅力です。」

リニューアルしたEGGについて伺うと「初めて訪れた時にうわーっと思える素敵な空間。ラグジュアリーなテイストですが、中にいる人がカジュアルなコミュニケーションを心掛け、居心地良い雰囲気を演出しているので良い感じに相まっていると思います。」とのこと。EGGの方々とお話しする時間を大切にしている若松さんは、EGGではラウンジ全体を見渡せる長テーブルにいつも座っているそうです。オフィスエリアから来た人もラウンジにいる人も、できるだけ目配りをして過ごしている人の様子も見て心地よいコミュニケーションを心掛けています。

若松さん:

「本当はコミュニティコーディネーターがいなくても、ラウンジにきた人同士が近況を話あえる関係性がいい。企業やメンバーの垣根を越えて、空間を共にした人たちが勝手に喋り出す関係性を作るところまでやっていきたいです。その関係性が実現した時にはコミュニティがEGGの魅力となって“良いコミュニティがあるから”と既存のメンバーさんが新しい方を連れてきてくれる。三菱地所がもつコミュニティの中でThe M Cubeは一番歴史が古いので、積み上げてきた時間の厚みと深さをもった大丸有エリアを象徴するコミュニティとなる可能性があります。そうなれば、場としてもコミュニティとしても持続可能な運営に繋がると思います。」

ずっと話していたいと思う、とても気さくな若松さん。ですがその瞳の奥には大きな熱があって、かっこいいなと思いました。

カフェの衛藤さん

ラウンジエリアのカフェにいる衛藤玲於奈さん。役職を伺うと「カフェの衛藤さんで大丈夫ですよ」とのこと。もうこの時点でとっても気さくで素敵です。
衛藤さんは、その日の天気に合わせたBGMを流したり、ラウンジの光の調整をしたり、ドリンクを作ったり、イベント時には提供する飲食を考えてサーブもしたりと様々なお仕事をしつつ、EGGが居心地良い空間となるように常に気を配っています。
「(利用される方にとって)なんかいつもヘラヘラしているメガネのお兄ちゃんがカフェにいるなあと思ってもらえたら」という衛藤さん。何か困ったことがあった時に弱音を吐けるような居場所であるように、いつも飾らずありのままでいるそうです。

空間を通してEGGの人に寄り添う衛藤さん。お仕事で楽しい時や、やり甲斐を感じる瞬間を伺ってみました。

衛藤さん:

「休憩に買っていただいたコーヒーが美味しいと言ってくれたら純粋にすごく嬉しいです。それから、挨拶しても最初は目もあわなかった方が徐々にカウンターに座ってくれるようになるような、人の心がだんだんと開いて歩み寄ってきてくれる瞬間に、この仕事はいいなあと思います。」

衛藤さん:

「本当は肩書きややってきたことを突破した上で人と人が繋がる場所にしたくて。個人的には名刺交換もいらない空間にしたいんです。どこどこの誰々じゃなくて、誰々さんってだけで。肩書きとか文化とか育った場所とか性別とか、多分もっといろいろあると思うんですけど、本当にそういうのをなしにして人と人が交わる場所があればもっと素敵だと思います。」

熱い熱い情熱を語ってくれた衛藤さん。話の終わりに「そんな場所を作るためにも、その場その場に応じて、大事なものを一つずつ拾っていけたら良いんじゃないかと思っています。」と結んでくれました。

塩谷歩波氏
塩谷歩波氏

設計事務所、高円寺の銭湯・小杉湯を経て、画家として活動。
建築図法“アイソメトリック”と透明水彩で銭湯を表現した「銭湯図解」シリーズをSNSで発表、それをまとめた書籍を中央公論新社より発刊。レストラン、ギャラリー、茶室など、銭湯にとどまらず幅広い建物の図解を制作。TBS「情熱大陸」、NHK「人生デザイン U-29」数多くのメディアに取り上げられている。2022年には半生をモデルとしたドラマ「湯あがりスケッチ」が放送された。
著書は「銭湯図解」「湯あがりみたいに、ホッとして」
好きなお風呂の温度は43度。

ZUKAI

図解ができるまでのストーリー

画家の塩谷歩波氏が、5ヶ月の時間をかけてEGGの建物を図解しました。図解を制作する思いや、制作の様子、完成するまでのストーリーを合わせてご紹介します。

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