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vol.17
プライスハブルジャパン株式会社

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取締役最高技術責任者(CTO) 田中 英輝氏

不動産の査定基準を覆す!スイス発革新的AI査定サービス日本上陸

世界を舞台に、最先端のビジネスを創造し暮らしの中で「あったらいいな」を実現しているスイス発、不動産価値をビジュアライズするAI査定サービス、プライスハブル(PriceHubble)が三菱地所の「EGG JAPAN」に入居している。
2017年不動産価格を透明化するべく、スイスでマッキンゼーの元パートナーが立ち上げたプライスハブルは、SaaS(Software as a Service)による不動産AI査定サービスを展開し、瞬く間にヨーロッパで大きな話題となった。
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独自の技術と柔軟な発想で革新的なサービスを生み出しているスタートアップ企業がなぜ次なる「挑戦」の場所として東京丸の内の「EGG JAPAN」を選んだのか。2019年に日本に進出したプライスハブルジャパン取締役CTOの田中英輝氏にその理由と不動産業界の新たなビジネスの可能性についてお伺いした。

「家の価格は最適なのか」誰もが気になる資産査定にフランス政府系機関が素早く反応し採用

例えば家を売ろうと考えたとき、不動産業者に査定をお願いすることになる。だが、その価格が本当に適正かどうか、その値段で売れるのかどうか、不安になる人は少なくない。
「実はヨーロッパでも、不動産は不透明な業界だと言われていました。IT化、AI活用もあまり進んでいなかった。そこで不動産の価値を透明化しようと生まれたのが、プライスハブルです」

その大きな特徴は、不動産価値をビジュアライズすることだ、と田中氏。
「不動産価格だけでなく、街の暮らしやすさや人口増減なども数値化して目に見える形にして見せることができたら役に立てるのではないか、と考えました」

本社のあるスイスでは、金融業界などからすばやく支持を得た。クレディ・スイスやスイス生命など、大手金融機関が次々に顧客になった。その後、フランス、オーストリア、ドイツに展開する。
「不動産取引を透明化しようと考えていたフランスでは、政府系機関が採用。これが、ヨーロッパで大きなニュースになりました。ドイツでは不動産の取引データが一切公開されておらず、価格の拠り所がないと言われていましたが、プライスハブルがビッグデータを解析、適正価格を打ち出せるようになり、次々に金融機関や不動産企業に採用されています」

そして2019年2月、日本で事業がスタートした。
「創業者が日本に親しみを持っていたこともありますが、日本の不動産市場はとても大きい。しかも、データがきれいなことも特徴的です」

騒音、メディカル、グルメ「街の暮らしやすさ」までもAIが分析し透明化

AIで査定するのは、マンションや一戸建てなどの住宅だ。国勢調査などの国のデータをはじめ、インターネット上に公開されている民間企業のデータを集めてデータベース化。AI技術を用いて法則を作り出すのだが、現在価値だけではなく将来価値も加味されているという。

「現在、周辺でどのくらいの価格で売り出されているか、といったデータに加え、将来の価値を決める要素を数値化して、スコアを出しています。例えば、客の入りが良く、評判のいいスーパーやコンビニなどの位置関係もポイントの対象になります」

教育も対象だが、教育レベルの話ではない。学校が多いところは環境がいいところが多いのだという。それはそのまま暮らしやすさにつながり、将来の不動産価格と関係してくるというのだ。

「グルメも対象ですが、レストランがあるかどうかではなく、グルメサイトの口コミ情報のポイントを計算しています。いいレストランがある場所は、将来価値にもつながるという考え方です」

その他、メディカル、レジャー、移動距離など、さまざまな角度からポイントが加算され、将来価値が計られていく。
「スイスでは環境データが充実していて、騒音の大きさもスコア化、ビジュアル化されています。夜間と昼間の違いなどもわかる。景色や陽当たりもスコア対象です」

インターネット上にあるデータを使って分析し、暮らしやすさをビジュアライズしていくのだ。
「また、実取引のデータが公開され、その土地の売り気配、買い気配まで見られる国もあります」

人的資産は代えの利かない自身の誇り

プライスハブルは、アインシュタインも在籍していたチューリッヒ工科大学との産学連携によって、システム開発をスタートさせている。また、創業者の元マッキンゼーのパートナーの人脈で、GAFAやスタンフォード大学の卒業生、ハーバード大学の卒業生などが高度な技術に携わっている。

「スイス本社に行って、スタッフ陣には驚かされました。まさに技術志向の会社なのだと肌で感じました。ブレーンには博士号を持った統計学者などもいます」
現在、世界で80人ほどの陣容だが、これだけの人材を集められている不動産AI査定の会社はまずないだろう、と田中氏は語る。

「人だけは志やビジネスの先見性に共感し、自身が納得しなければアクションをおこすことはありません。だからこそ私自身、これなら誇りを持って勧められると思いました。長くフリーランスで仕事をしていて、自分の仕事結果だけが評価対象の世界で生きてきましたので、お客さまに間違いなく喜んでもらえると確信できたことは大きなモチベーションになっていますね」

そしてプライスハブルが目指しているのは、プラットフォームサービスだ。自社では不動産事業を展開しないため、公平中立を保ったまま事業を推し進められる。日本法人の設立から1年半。BtoBtoCのビジネスモデルで着実に顧客数を増やしている。

例えば、不動産仲介会社や販売会社。当然だが、適正な金額を知りたいのは、コンシューマーはもちろん不動産事業者も同じだ。また、不動産開発会社も同様。新築のマンションや戸建てを、いくらで売るかの大きな指標になるからだ。

「プライスハブルの強みは、物件が建っていなくても、査定できることです。更地の段階で、どのくらいの収益が得られる物件になるかがわかる。そこから、価格をシュミレーションできます。フランスでは、開発会社からの受注が大きく拡大しています」

金融機関にAI査定システムでいかに評価してもらえるかが肝要

また、マンション管理会社にもニーズがあるという。オーナーから物件を預かって賃貸物件としてオペレーションしているのが、マンション管理会社。入居者とやりとりをすることになるが、家賃をいくらにするかが難しいのだ。

「オーナーとすれば、少しでも高く貸したい。しかし、高くなり過ぎてしまうと、今度は入居者が入ってこない。相場を双方で納得するために、不動産AI査定を役立ててもらうことができるんです」

そして、なんといっても金融機関だ。物件の担保価値をしっかり評価できるかどうかは、金融機関の経営に少なからず影響を与える。将来価値となれば、なおさらである。しかし、金融機関の本業は融資。不動産査定のプロではない。そこで、AIの査定システムを活用するのだ。特に地方銀行で高いニーズを感じているという。
「こちらは、金融機関向けにソリューションを提供しているベンダー、ISID社とパートナーシップ締結しています。彼らのパッケージに組み入れて展開することを考えています」

SaaSモデルで、使用量に応じて、あるいは月額で、など利用料の支払いもバリエーションが豊富だ。

データが増え利便性が高まれば「人のため」にもなっている

プライスハブルジャパンは、日本法人の設立時点から、EGG JAPANに入居している。その理由について尋ねてみた。
「何故かと問われれば、私たちはスタートアップですが、取引をするのは日本を代表する大手企業です。丸の内にオフィスを構えていることは、大きな強みになります。東京駅が目の前という交通の便も抜群ですし、ゲストもお招きもしやすい」

現在、フルタイムの社員に加えて東大と慶應義塾大の大学院生3名がインターンとして日本のデータをスイスで読み取れるよう整形する仕事をしている。
「インターンを募集するときにも、このオフィスは魅力だったと思います。こんなところで働けるなんて、と言ってもらえましたので。親御さんにも安心感があったようです」

以前はEGG JAPANのイベントにも参加。勉強になったと田中氏は語る。コラボレーションスペースは、新型コロナウイルスの問題が起こるまで、丸の内の美しい夜景を見ながらお酒を楽しむ場としても使っていたそうだ。
「不動産取引は逆境の中でも活性化しています。ビジネス的には追い風になっています」

今後は、さらに大手企業の取引先を広げ、ビジネスを大きくスケールさせてきたいと語る。
「使っていただけば使っていただくほど、データも増えていきます。利便性も上がります。多くの方々の共通のモノサシとして使ってもらえたらと思っています」

データは集まれば集まるほど、算定の精度は上がる。それは、取引を活性化させることにもつながる。
「その次元に、持っていきたいですね」

プライスハブルジャパンの勢いは止まらない。

※記事内容は緊急事態宣言前の取材時のものです。
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取材・文:上阪 徹
編集:丸山 香奈枝
撮影:刑部 友康

田中 英輝氏

田中 英輝氏

カナダ留学、外資系商社での技術通訳などを経て、独学で技術をマスターしてフリーランスのエンジニアに。さまざまなシステム開発、大企業の基幹システムサポートやスタートアップの支援などを経て、2019年2月のプライスハブルの日本法人設立に参画。スイス大使館で行われたAIテックのスタートアップイベントでの出会いが転機となる。

プライスハブルジャパン株式会社

PriceHubbleは、機械学習、ビッグデータ、分析手法や、効果的な視覚化などの先進的な技術によって、不動産に関わる企業の不動産や投資の判断をサポートしている。主に不動産仲介会社、管理会社、デベロッパー、銀行、生命保険会社、投資法人などを対象にしたデジタルサービスを提供。チューリッヒ、ベルリン、パリ、ウィーン、東京に拠点を持ち、国際的な成長を目指し、約80名の社員が在籍している。2016年に、Dr. Stefan Heitmann、Markus Stadler、Olivier Bachem によって設立した。

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