2021年10月5日、三菱地所が運営するEGG JAPANのビジネスコミュニティ「東京21cクラブ」と、イベント・コミュニティ管理サービス「Peatix」が共同開催する「Founders Night Marunouchi X vol.31」を実施しました。(前回のイベントレポートはこちら )。

今回のイベントで語られたテーマは「世界先端人材との共創が生み出すこれからの価値創造」です。

世界先端人材とは、グローバルに活躍しているビジネスエキスパートのこと。企業の課題に伴走することで、新たなイノベーションを創造する可能性を秘めています。なぜ、世界先端人材との共創が求められるのでしょうか。そして、大手企業における外部リソース活用のポイントとは。

今回お招きしたのは、スクラム型課題解決を提供するプラットフォーム『SWAT Lab』を運営する、株式会社SWAT Lab代表の矢野圭一郎さんと、街づくりのDXに取り組む三菱地所株式会社DX推進部の春日慶一さん。Peatix Japan取締役の藤田祐司さん、東京21cクラブ運営統括の旦部聡志がモデレーターを務め、大企業がエキスパート人材の知見を活かし、イノベーションを創出するための方法について伺いました。

 

エキスパートネットワークが生み出す「価値」でスピード感のある課題解決を

イベントの冒頭、矢野さんは創業理由とともに、世界に分散するエキスパートネットワークを活用したビジネスについて語りました。

矢野さんは、Salesforce.comやGoogleなど、外資系IT企業で法人向けクラウドサービスの事業開発を経て、2017年にドイツ・ベルリンにオープンイノベーション支援事業を展開するInteracthub GmbHを設立。その後、ベルリンでWeb3.0系の企業が目指していた新しい組織の形、自律分散型組織(DAO)とそこにつながるロケーションや職種を問わない新しいチームの働き方に影響をうけて、東京に2020年に株式会社SWAT Labを創業しました。SWAT Labは『企業と人の新しい関係性を創る』をビジョンに掲げています。

海外で起業した理由をこう語ります。

矢野「日本における起業直後のイメージは、極端に言うと『マンションの一室に籠もって、ひたすら働き続ける』といった印象があるかと思います。それに、いきなり『海外でビジネスを』と考える人はあまり多くないですよね。でも、スペインのビジネススクールに通っていた際に出会った起業家たちは、そういったイメージとかなり異なっていました。

例えば、ドバイで働いているイギリス人がベトナムでNPO法人を立ち上げていたり、オランダ・アメリカ・シリアの国籍を持つシリア人が複数の国でレストランを経営したり。働き方はとてもスマートだし、いきなり国をまたいでビジネスを展開するなど圧倒的に自由だと感じました。起業にも様々なスタイルと多様性があることを知りました。

自分もスマートに、グローバルに働く起業家を目指したい。しかし、日本国内に目を向けるとロールモデルがほとんど存在しないことに気付き、自分がそのロールモデルになろうと思いました。」

『SWAT Lab』は、世界中のエキスパートの知見を活用し、導入企業の新規事業をサポートするSaaSです。同サービスのコミュニティには、エンジニアリングやUXデザイナー、データサイエンスなど、様々な領域のエキスパートが世界中から参加しています。導入企業は、プラットフォーム上で課題解決のエキスパートチームを即結成することができ、テキストチャットを用いてアドバイスを受け取ることが可能です。その知見をもとに自社の課題を解決に導き、テキストの非同期コミュニケーションで信頼関係を気づいた上で採用やプロジェクト発注に結びつけることも可能です。

  <SWAT Lab上で課題の登録から振り返りまでを一気通貫で行える仕組みになっている>

矢野「ビジネスにおける成長や変化が加速しつつある中で、『人』の活用はますます重要になっています。これまでは社内のリソースで解決できない課題については、外注することが主流でした。しかし、今後は会社の枠を超え、様々な分野のエキスパートを必要に応じて迎え入れ、スピード感を持って課題を解決していくことが重要になります」

さらに、『SWAT Lab』が月額制でサービスを提供する背景には、エキスパートたちの働き方の変化があります。

矢野「これまで外部リソースを活用する場合は、プロジェクト期間に応じてフィーを設定し、時間に応じてコミットしてもらう方法が主流でした。しかし、市場でトップクラスの評価を受けているエキスパート人材の多くは、本業にコミットして『成果』で動いているため、副業を『人日』『人月』といった単位で『労働時間の切り売りモデル』でフルコミットして行うことは難しい。

これまで日本でいわれてきた正社員に対してのフリーランスや人材紹介・人材派遣という旧来のカテゴリー分けとは全く異なる、『新しい挑戦ができる環境と、新しい貢献のかたち』が特にハイキャリア層の市場で必要とされている事がわかりました。

エキスパートたちは、『どれだけの時間コミットしたか』より『どれだけの価値を生み出せたか』を重視して個々のプロジェクトにコミットしているわけです。だからこそ、プロジェクトの期間に応じて料金を設定するのではなく、月額制でサービスを提供しています」

 

社内と外部のエキスパートと連携し、暮らしやすい街づくりを実現する

「エキスパート人材との連携は欠かせない一方で、外部の人材の力をどの程度借りるかは、しっかりと検討する必要がある」と語るのは、春日さん。

新卒で三菱地所に入社した春日さんは、主に不動産開発に携わり、直近ではDX推進部にてDtoC領域のデータ&UXデザインを担当しています。

三菱地所は、2021年6月に「三菱地所デジタルビジョン」を策定。オンライン・オフラインをかけ合わせた体験を提供することで生活者にとっての暮らしやすい街を実現する、「新しい街づくり」を推し進めています。

春日「これまでは『街づくり=オフラインの体験構築』というイメージがありました。しかし、新型コロナウイルスが流行してからは、OMO(Online Merges with Offline)化、つまりオンラインとオフラインの融合が進みました。そのため、オフラインの体験構築に偏った考え方では生活者との接点が不足し、暮らしやすい街づくりを推進できません。

また、私たちは生活に関係するWebサービスを複数展開しているにもかかわらず、ユーザーの属性や仕事などのデータが部署ごとに管理され、全体で共有されていない課題を抱えていました。そこで、オンラインで収集したデータを一元化し、オフラインで集めたデータと統合することで、オンラインでの体験とオフラインでの体験を接続する仕組みを構築しています」

<オンラインとオフラインのそれぞれで獲得できるデータの違いに着目し、うまく統合することによってより良い街づくりを目指していく>

三菱地所では、2021年4月に丸の内ポイントアプリ、2021年9月にみなとみらいポイントアプリをリリースしています。これらのサービスを通して、ユーザーとの様々なコミュニケーションやコミュニティを創出していく予定だと言います。

さらに、街で利用できる共通認証ID「Machi Pass」を開発し、街で展開されるモビリティやデリバリーサービスなどのオンラインサービスと、実店舗での買い物などのオフラインサービスを一つのIDで利用できるようにしています。

春日「三菱地所の強みであるお客様とのリアルでの接点に加え、これからはオンライン上での接点も増やしていきたいです。オフライン・オンラインで得たデータを元に個人の行動パターンを把握し、社会全体でオープンな街づくりを実現していきます」

DXを推進していく上では、「社内の人材のみならず、外部のエキスパート人材が持つ力も活用し、チームとして一緒に取り組むことが不可欠だ」と春日さんは語ります。

春日「我々のようなデベロッパーは、自社のみで建物を建てられるわけではありません。外部のデザイナーや設計士など、いろいろな方との協働がもともと必要な業態ですから、デジタル分野においても社外とのチームアップの質を重視しています。

ただし、不動産開発と同様、デジタル分野においてもすべてを外部に任せてしまうと、自社に情報が全く残らないといった事態を引き起こす場合があります。ある程度の内製は大切であり、外部リソース活用との適切なバランスは、今後も探っていかなければなりません」

<DX推進部はいくつかのユニットから構成されている。ユニット同士で細かく連携しつつ、時に外部のエキスパートと協働することも重要となる>

 

さらなる挑戦を求めて世界中のエキスパートが集結

両社の取り組みとエキスパート人材の活用について語られた後、春日さんは「拠点、メンバー、ターゲットとするマーケットを分散させている理由は何か」と矢野さんに問いかけました。ベルリンで会社を興し、日本のマーケットを狙ったサービスを世界中に散らばるメンバーと共に開発する理由について、矢野さんは「それが自然なことだったから」と話します。

矢野「海外で起業した理由は先に述べた通りですが、ドイツ、特にベルリンのスタートアップは、拠点・開発チーム・マーケットがドイツ外にあることが多く、私たちだけが特殊ではありません。

例えば、ドイツ発のモバイルバンク『N26』は、ファウンダー兼CEOがオーストリア人。ターゲットはドイツをはじめとした欧州で、資金調達はアメリカや中国などから行われています。

また、新型コロナウイルスの流行前から、自律分散型の働き方を採用する企業は少なくありませんでした。私たちに最適な働き方や組織は何かを考えていく中で、そうした分散型のチーム編成が現状のベストだという結論に、自然と至りました」

         <この日のイベントはオンラインで開催された>

さらに、海外のエキスパート人材を集めた方法についても言及しました。

矢野「SWAT Labを始めた当初は世界中のエンジニアを集め、日本企業をターゲットに英語でサービスを提供しようと考えていました。しかし、『英語では分からない』と日本の企業からあまり受け入れられませんでした。

そこで日本語が可能なエキスパートという視点で募集したところ、海外在住の日本人が集まってくれました。もともと私自身が海外に住んでおり、共感を得やすかったのもあるかもしれませんが、元外資系戦略コンサルタントの方や、イグジット経験のある起業家、海外の著名スタートアップで働いている方、アートやデザイン等海外のほうが高い評価を得ている職種で海外在住ではあるが日本企業に貢献したいと考えている方、また市場ではトップクラスのキャリアを持ちながら家族の海外駐在同伴等で自身の持っている力を活かしきれていないと感じる方々が挑戦を求めて、我々のプラットフォームに参画してくれました」

 

「企業」と「個人」の関係性を見直したい

次に語られたのは、イノベーションを創造するためのエキスパート人材の活用について。矢野さんは、スピード感を持ってエキスパート人材をチームに取り込むことがビジネスの鍵になると語ります。

矢野「SWAT Labを通してお客様とお話する中で、日本の大企業の多くが、新しいものを作ることに課題を抱えていると感じています。大企業は部門間の連携が容易ではないことが多く、たとえば協働のためには複数の部門や管理職からの承認を得なくてはならないなど、構造的な難しさがあります。

新規事業やイノベーティブな取り組みにはスピード感が重要です。私たちのサービスは、世界中から集まった優れた人たちをチーム化し、雇用という形以外でその力を借りられる仕組みを提供しています。人の流れを整備し、信用あるエキスパートと意見交換可能なプラットフォームとして、活躍できると考えています」

最後に、お二人から今後の展望が語られました。

矢野「企業と人との新しい関係を作るインフラでありたいと考えています。これまでは、学歴や職歴など、履歴書に書くような情報が信用を担保していました。しかし、それがベストだとは限りません。どの組織に所属しているかではなく、仕事の内容や実績によって信用が担保される仕組みを作りたいです。

将来的には、ユーザーへの価値提供を通したエキスパート一人ひとりの信用が蓄積されることによって、採用や就職などのマクロな仕組みを、このプラットフォームを通して変容させていきたいです」

春日「街と個人の関係性を再構築していきたいと考えています。やはり、街で生活する一人ひとりの情報が分からなければ、正しいプロダクトは作れません。『企業が作る街』から『個人が街全体をデザイン』していく考え方にシフトし、街・企業・個人の関わり方を新しくしていきたいです」

<「新しい関係性をつくること」を掲げたお二人。テクノロジーを最大限に活かし、チームや組織の壁を超えたコラボレーションを生み出すことに挑戦していく>

お互いに共通するビジョンを熱く語り、イベントは締めくくられました。


▼当日のセッション
『世界先端人材との共創が生み出すこれからの価値創造』
https://youtu.be/n1lsB1B4aOk

★次回のFounders Night Marunouchiは、10月27日(水)に開催予定です。

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