2020年9月2日(水)、三菱地所が運営するEGG JAPANのビジネスコミュニティ「東京21cクラブ」と、イベント・コミュニティ管理サービス「Peatix」が共同開催する「Founders Night Marunouchi」第16回を実施しました。(前回のイベントレポートはこちら)。

このイベントは、スタートアップの第一線で活躍する経営者から学びを得るもの。今回登壇したのは、株式会社Public dots & Company代表の伊藤大貴さん。同社は、地方議員や公務員と企業プロジェクトとのマッチングを支援する会社です。

伊藤さんは新卒で日経BP社に入社。その後、日本の法整備に問題意識を感じ、2007年に横浜市議会議員に。オープンデータの推進や公共アセットの有効活用、データに基づいた都市経営に注力するなど、10年間議員として走り抜けました。

今回のイベントでは、官民どちらも経験してきた伊藤さんだからこそ感じる両者が協力する重要性や、秋にリリースする予定のサービスの内容を伺いました。モデレーターはPeatix Japan取締役 藤田祐司さん、東京21cクラブ運営統括の旦部聡志です。

 

議員として奔走した10年から感じた「官民の連携不足」

 

銀行倒産でニュースのなかで慌てる大人たち。バブル崩壊で就職氷河期へ突入──。

1977年生まれの伊藤さんは上記のような社会情勢を目の当たりにしながら育ってきました。既存のルールでは社会が回らなくなるなかで「社会に歪みが生じる時代をこの目で見てきた」と伊藤さんは言います。

皆が幸せに暮らせるルールを作ってみたい。そんな気持ちが膨らみ、新卒で入った日経BP社を退職。横浜市議会議員に立候補し、政治の世界に飛び込んだのは29歳のときでした。

「政治の世界に入れたのは良かったものの、特有の人間関係や慣れない業務……とにかく大変でしたね。立候補したときは、こんなに大変だなんて思ってもいなかったです」と笑いながら当時を振り返ります。奔走しているうちにあっという間に流れた10年間の議員時代。特に、横浜スタジアムの再建プロジェクトが最も印象的だったそう。

「ディー・エヌ・エーと協力し、東京オリンピックに向けて6000席を増築。4年かけて条例改正を含めたルールの見直しをしていきました。官民共創で大きなプロジェクトを成し遂げ、私にとっても大きな成功体験となりました」

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株式会社Public dots & Company代表の伊藤大貴さん

さらに、「今の横浜に最も足りないのは都市のビジョン」という問題意識から2017年に横浜市長選挙に立候補。各地で演説に駆け回る日々を過ごしましたが、惜しくも落選。しかし、伊藤さんの心にあったのは落胆ではなく、次なる挑戦への思いでした。

「自治体は資金が限られて人が十分に雇えず、アイデアも出づらいといった課題を抱えています。横浜スタジアム再建プロジェクトの成功を通して、もっと良い民間と自治体の連携の仕方があるのではないかと考えるようになっていたため、それを実現する会社をつくることを思いつきました。落選後に大手企業からのスカウトもありましたが、せっかくなら自分のやりたいことを優先しようと思って起業の道へと飛び込んだのです」

 

500人の地方議員が登録。サブスク型の新たなサービスを11月に発表へ

 

そんな思いから、2019年に設立されたPublic dots & Company。同年10月には博報堂の官民共創事業のフェローに伊藤さんが就任し、スマートシティの事業開発や地方創生関連事業に携わっています。これまでの知見や経験を活かして、愛媛県や三重県など地方自治体のデジタル戦略も担当。伊藤さんは様々な人を巻き込みながら、多くの事業を牽引しています。

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その一方で、官と連携して事業を行いたくてもコンサルティング費を払う予算がない企業も多く、「サポートできないもどかしさも感じていた」と言います。

「新しいサービスを開発しても規制が厳しいとグロースは難しい。世界的にサービスを展開しているAirbnbやUberも、日本でのスケールは困難でした。自治体と協力し、サービスの展開戦略を練っていくことは企業の大小かかわらず重要になります」

そこで、伊藤さんは議員と気軽にやりとりできるサブスクリプションモデルのサービスを開発。11月にリリース予定だと言います。すでに、500人程の地方議員が登録。資金がなく官との連携に踏み出せていなかったスタートアップでも利用しやすい価格になっています。

一方、自治体も新型コロナウイルスの影響により、デジタル化の促進や新たなあり方の模索が急務に。最後に伊藤さんは今後の展望を語り、イベントは締めくくられました。

「私たちは『公共を再定義すること』をミッションとしています。公共は自治体だけのものだと思いがちですが、企業、NPO、生活者など様々な存在で支えているはず。まずは企業と自治体連携をスムーズにし、一緒に乗り越えていくことが使命だと思っています」