本内容は日経ビジネス2018年11月19日号内から抜粋し、再編集したものです。無断転載を禁止します。

三菱地所は「xTECH(クロステック)」というミッションを掲げ、スタートアップ企業の支援・共創という挑戦を開始した。特に丸の内エリアでは、企業誘致とともに、「オープンイノベーションフィールド」を掲げ街やビルを使った実証実験なども行なう。 CEATEC JAPAN 2018では、新進企業と共同で初出展を果たし、注目を集めた。

■丸の内に新進企業を誘致、共創の場を育てる

日本を代表する総合デベロッパーである三菱地所のホームグラウンドが丸の内エリア。大手企業のイメージが強い丸の内だが、三菱地所は近年、ここにスタートアップ企業や成長企業を誘致、コミュニティを形成し、共創促進やマッチング等を通じたビジネス開発支援に取り組んでいる。同社が所有するビルを活用し「EGG JAPAN」、「Global Business Hub Tokyo」 、「FINOLAB」など、企業をサポートする複数の拠点を続々と開設している。

そのキーワードは「×(クロス)」。集まった企業と三菱地所、あるいは企業同士が刺激し合い、連携して相乗効果を生み出すことで、丸の内を創造的空間にしようというのだ。三菱地所は2018年に「xTECH 営業部」を新設し、より積極的にこのような取組みを加速している。

■スタートアップ企業の集積が未来の成長につながる

今年のCEATEC JAPAN 2018で、三菱地所は丸の内・大手町エリアで活躍中の9社のスタートアップ企業と共同でブースを設け初出展した。また、会場では共同出展企業の内、クラウドリアルティ、ゴールドアイピー、ナーブという3社のスタートアップ企業の代表を招き、パネルディスカッションも行った。

ナーブは不動産、観光などの業界にVR(バーチャルリアリティ)を応用したプラットフォームを提供している。代表の多田英起氏は「スタートアップ企業は短期間に成長し、社員数も急増するため、オフィス探しに苦労する。そんな折、三菱地所に出会った」と振り返る。「Global Business Hub Tokyo」を皮切りに「FINOLAB」、現在は「大手町パークビル」といずれも三菱地所が運営するビルに入居してきた。

クラウドリアルティは、不動産の再生・リノベーション、新規開発などに係る直接金融の資金調達プラットフォームで、京都の町家の再生、海外ではエストニアの不動産開発のための資金調達プロジェクトなどでも昨今脚光を浴びている。代表の鬼頭武嗣氏は、「スタートアップ企業の苦労の1つは優秀な人材の確保。三菱地所からは出資も受けており、協業案件を通じた人的リソースの提供等も期待している」と語る。

またゴールドアイピーは、AIを活用した特許審査シミュレーション「IP Samurai」サービスを提供する。代表の白坂一氏は、「将来的には、AIに人間のような発想で発明をさせたい」と意気込む。「丸の内は弁護士事務所も多く、法曹業界での交流もメリット。イメージが良く、飲食施設の充実など社員の福利となる要素も多い」と評価する。

「FINOLAB」に入居する鬼頭氏は「スタートアップ企業にとってイノベーションを起こしやすいコミュニティは非常に大切」と指摘。実際、この3社には今回のパネルディスカッションを通じて、協業の可能性も見えてきた。例えばクラウドリアルティが海外の不動産を証券化し、その出資者はナーブのVRシステムで物件を確認、ゴールドアイピーがナーブのVRシステム等の特許を支える、といったこともあり得る。こうした自然発生的なコラボが期待できるのも「xTECH」の醍醐味だ。

今回の出展を機に、丸の内における企業同士の「×(クロス)」はさらに勢いを増しそうだ。

01_670 ●共同出展メンバー(画像左から)
クラウドリアルティ 代表取締役 鬼頭 武嗣 氏
ゴールドアイピー 代表取締役社長 弁理士 白坂 一 氏
ナーブ 代表取締役 多田 英起 氏