2018年2月14日(水)、EGG JAPANにて「丸の内フロンティア定例会」を開催しました。今回は「民泊ビジネスの実態と今後の可能性」をテーマに、楽天LIFULL STAY株式会社HomeAway日本法人日本法人が展開するサービスが紹介され、これからの国内宿泊事業やシェアリングビジネスについて議論が活発に交わされました。

■登壇者事業紹介 楽天LIFULL STAY株式会社 代表取締役 太田 宗克さん HomeAway日本法人代表 木村 奈津子さん ■セッション:「民泊ビジネスの実態と今後の可能性」 ■質疑応答

以下、セッションレポートです。

IMG_2520 ―なぜこれほど早期に合弁会社を立ち上げ、参入を決定できたのでしょうか。

(太田)もともと、楽天は新経済連盟の加盟社の一つであり、新経済連盟が国土交通省に要望を出していたので注目していた。国会での決議のタイミングも考えながら、法施行の契機も伺っていました。

―ビジネスとして「民泊」に着目されたのは社員のみなさんでしょうか。あるいは三木谷氏のご意向もあったのでしょうか。

(太田)三木谷がもっとも国内外の動きに敏感なのは間違いありません。早い段階で彼も民泊の可能性に気付いていたと思います。民泊ビジネスに焦点があてられるのは世界的にみても当然の流れですし、法律の整備もどこかで必要となることは明白でした。新規事業開発をしたいわれわれのニーズともうまく噛み合いました。

―会社設立時は、楽天さんからLIFULLさんに話を持ちかけられたのでしょうか。

(太田)LIFULLの代表を務める井上さんは以前から民泊に関心をお持ちでしたし、楽天とは資本関係があったので以前から何か一緒に事業をできないかという話はありました。そのため、会社設立が決まってからは展開が早かった。

―パートナー関係を結ぶ両社。互いをパートナーに選んだ理由は?

(太田)HomeAwayさんは圧倒的に世界でナンバーワンです。きっかけは、ランチですかね(笑)。その1週間後くらいに、トップマネジメント研修で幹部らが来るとシンガポールに誘われて、最終的に合意に至りました。

(木村)弊社では今後日本で営業活動を強化したいと思っていたのですが、社内だけでは動ける人数が限られ、自社ですべてを賄うのはむずかしいといった背景がありました。私たちの強みは欧米を中心とした対インバウンドの展開力です。国内での展開ではパートナーシップが必要だと思っていた時に、楽天LIFULL STAYさんと出会いました。LIFULLさんが持つ不動産のネットワーク、楽天さんのブランド力、そしてランチでの意気投合。(笑) 会社として向かう方向性が同じだと感じました。出会うタイミングが良かったのかテンポよく話が進みましたね。

―熱量を持ったもの同士だったということですね。両社の役割分担はいかがですか。また、マネタイズモデルはどうなっているのでしょうか。

(太田)われわれの役目としては、法令に則って民泊物件を新たに創出することが第一です。それからHomeAwayさんと世界中に広げていく。物件を創出するのがわれわれのミッションです。マネタイズとしては仲介手数料を設け、売上をシェアするというモデルです。

(木村)プラットフォーマーとしては集客にフォーカスしています。集客のパターンとしては2つあると考えられます。まず、東京や大阪などの大都市では黙っていても物件が検索される。つまり、仕入れる数を増やせば増やすほど顧客が増えるというパターンです。一方、海外ではまだ知られていない日本の地域もたくさんあります。アクセスでは大都市に劣る地方都市においては、需要喚起のためのマーケティングも重要だと考えています。

―太田さん側の課題は仕入れを増やすこと、と先程のお話にありました。また他方では、物件の稼働率を担保することも必要だと考えられます。ゲストに対する課題意識という点ではどのようにお考えでしょうか。

(太田)「稼働率」を図るのは、立地だけでなくあらゆる要素に左右されるのでむずかしいんですよね。留意しているのは、さまざまなメディアを使って物件の需要喚起することです。釜石市の例など、行政との提携もそのひとつです。空き家をただリノベーションしても、仕掛けをつくらないとなかなか入居してくれる人が見つからない。行政のみなさんを巻き込んで、集落単位で仕掛けを使っていく必要があります。例えば、自然を活用してキャンプ場をつくり、「手ぶらでキャンプできますよ」と特集ページを設けて発信していく。それらが盛り上がってくれば、自ずとサイト自体のコンバージョンが上がっていく。プラットフォームでの情報発信までの一連の流れを仕掛けていくことが重要ですね。

(木村)地方創生に関する取りくみの一例として、せとうちDMOとの協業があります。古民家再生プロジェクトの第一弾となる対象地域が愛媛県内子町という町で人口1万人以下、観光客の外国人比率は1%。町おこしには、DMOサイドのイニシアティブを取る人と地域リーダー、その両者が要です。またリノベーションされた古民家が1,2軒あるだけでは、それほど効果はありません。宿泊施設物軒数がそれなりにあり、さらにその土地で何が出来るのかを訴求する必要が出てくる。内子町なら「昔ながらの日本文化を体感できる素敵な町並み」、「着物街歩き体験」、「いちご狩り」など。そのほか、文化財の施設など街全体で、点ではなく面として魅力を発信することが大事だと感じています。

―行政との連携。むずかしさはありますか。

(太田)話としては盛り上がるのですが、次の段階として予算を通すのがむずかしい。最後まで諦めずやり切ることが大事ですね。

―地域を訪れる外国人のマナーが話題になることが度々あります。啓蒙は必要でしょうか。

(太田)実施する前から想像で否定し過ぎると、いろいろな機会を喪失してしまうと思うんです。まずは動かしてみて、問題が起こった場合に建設的に改善、提案していくのが良いのではないでしょうか。例えば、使い方のルールを示した案内文をきちんと部屋に置いておく、などです。

―海外のゲストへのアプローチはどのように?

(木村)例えば、せとうちの例を出すと広島は海外での知名度は高いのに、その他の県はあまり知られていません。飛行機のルートもあり、アクセスは悪くないけど集客に困っている。そうしたエリアをカバーするために、せとうちエリア全体としての魅力を訴求しています。

IMG_2560 ―東京オリンピック以降の地方での集客については、どのようにお考えでしょうか。

(木村)近年のインバウンドの上昇トレンドと東京オリンピックはあまり関係ないと、個人的には思っています。円安、LCC増便、ビザの規制緩和などで、多くの外国人旅行者が日本に来やすくなったことが主な要因だと考えます。為替はわかりませんが、その他の要因としてはオリンピック後も同トレンドだと思いますので、基本的には訪日旅行者は右肩上がりで増えると予想しています。そうなるとリピーターがますます増えてくるので、東京、京都、大阪といったメジャーな都市に次ぐ新しい地域を認知してもらうことも必要になってくるでしょう。数十年先までの動きを見越したリピーター戦略が課題となると思います。

―英語が話せない田舎の高齢者がネックになる?

(木村)同時通訳や翻訳のツールが進歩していています。現地の方々と旅行者を仲介するツールは増えていくので、そうした心配は年々減ると考えています。

―どんな人が民泊ビジネスに向いていますか。参入メリットは?

(太田)もっとも簡単に始められるのは「民泊新法」ですが、180日以内というルールが設けられています。空き家を持っているがうまく活用できない、けど手放せない。そうした人であれば、週末だけでもこの制度を活用してもらえばうまくハマると思っています。「特区民泊」だと365日活用できる。東京・大田区のほか、最近では千葉でも導入が検討されています。本気でビジネス化するなら「簡易宿所」でしょうね。90%はレジデンスで10%は民泊、などの比率で調整できるようになれば「特区」も有効かもしれません。「特区」がもっと広がっていけばいいなと思っています。

(木村)別荘や空き家の実家などのオーナーさんは、家のメンテナンスとして定期的に使っていない間も換気やお掃除が必要になります。バケーションレンタルとして旅行者に貸し出せば、メンテナンスコストをカバーするだけでなく利益が出るというメリットがある。
しかし現状としては、日本で別荘を持つ人は富裕層がメイン。他人には自分の別荘に入ってほしくないという方も多いんです。今後は、バケーションレンタル活用で利益を生める別荘として、より幅の広い方々に販売する流れができて、ある程度地域でそういった別荘をまとめることが出来れば新たな市場ができるのではないかと思います

―大手企業にとって、魅力的なビジネスになり得るでしょうか。

(太田)国内の業界は世界のシェアリングエコノミーとちょっと違う。民泊というかたちで、今まさに新しいアコモデーション・スタイルが生まれようとしている。そう考えるとポテンシャルのある事業だと捉えることができます。大手企業の方はぜひ参入されてはいかがでしょうか。

―成功するための要点は?

(太田)最初にきちんと収支想定をして、オペレーションも含めたシュミレーションしておくことですね。

―どういう分野に波及効果がありそうでしょうか?

(木村)物件のコンセプトやターゲティングが求められるのではないかと読んでいます。同じ物件ばかりだとユーザーとしても退屈してしまうし選ばれない可能性も多い。外国人を対象にするなら、彼らのためのデザインやキャッチコピー、コンセプトづくりが求められるでしょうね。実際にあった例だと「タトゥーOKの銭湯から徒歩5分」などの物件タイトルのキャッチコピーや「着物の壁掛け」がある寝室、「近所のおいしいラーメン屋の説明」など。そうしたニーズを捉えるだけで他のお部屋と差別化されて売り上げにつながるのです。

―国ごとにニーズは違いますか。ある程度、アメリカなどの大国にターゲットをフォーカスすべきでしょうか。

(木村)そうですね。京都では「サムライハウス」が人気です。日本らしい和室に鎧を置くなんて日本人には好まれませんが、外国人にはものすごく好評なコンテンツなんです。

(太田)周辺事業でいうと、カギの受け渡しや本人確認などに関わる事業でしょうか。あとはクラウドファウンディング周辺ですね。町家を立ち上げる事例もありますが、そうした活用の仕方が加熱するのではないでしょうか。

―手を組みたいサービスはありますか。

(木村)集客のキーになるのは「ローカラーゼーション」です。日本語や英語、中国語、韓国語、フランス語と多言語対応のサポートが必要です。あとは、キャッチコピーと翻訳、写真ですね。とくに写真のクオリティが重要です。ただ質が良いだけではなく、民泊の知見があると重宝され、売上にもつながるのではないでしょうか。

(太田)多言語対応や質の良い翻訳、カスタマーサービスには興味があります。清掃は意外と大事ですね。清掃会社によってレベルが全然違う。地方展開をするとなると早めに考えるべきポイントではないかと思います。

―リスクヘッジは?

(太田)レジデンス展開できる、フレキシビリティのある部屋をつくることですね。家具で間仕切りをつくるなどして、宿泊からレジデンシャルへの切り替えも視野に入れています。

(木村)ターゲットはインバウンドが中心になるものの、国内での需要創出も不可欠です。一軒家を借りて数家族合同でホームパーティーをする、親しい友人と集まって誕生日パーティーをするなどの別荘体験が近場でできるようになると、都市部のお客さんにも利用してもらえるようになるはずです。

―もはや新しいライフスタイルと文化となりつつある「民泊」。今後の展開に掛ける思いをお聞かせください。

(太田)日本のアコモデーションサービスを変えたいと思っています。新しい選択肢を増やすことで、大きな経済効果を生み出せるサービスを創出したいですね。

(木村)私たちも同じ思いです。民泊のイメージネガティブを払拭して、地方創生を含めてポジティブな存在に変換していきたいと思っています。

IMG_2646