2月12日(金)に、世界規模のアプリの市場データと分析ツールを提供する情報プラットフォームApp Annie主催のイベント「DECODE―NonGame編」が行われました。

「DECODE」はサンフランシスコやニューヨークなどといった、世界におけるアプリコミュニティ発展のために開催されているイベントです。

今回のテーマは「事業会社のアプリ企画の勘所〜アプリを活用した事業促進に向けて〜」。

トップアプリパブリッシャーの方々をお招きし、どのようにアプリを導入し、自社事業においてどのようにアプリを活用しているかについてお話を伺いました。

今回お話を伺ったのは株式会社良品計画 Web事業部 CMT 濱野 幸介さん、株式会社パルコ Web/マーケティング部 部長 林 直孝さん、株式会社東急ハンズ オムニチャンネル推進部 オムニチャネルコマース課 主任 緒方 恵さんのお三方をメインに、App Annieの向井さんもモデレーターとしてご参加いただきました。

【今回のトピック】
■アプリ市場最新トレンドについて
■事業会社のアプリ企画の勘所〜アプリを活用した事業促進に向けて〜

まずはApp Annieの向井さんよりアプリ市場の最新トレンドについてご紹介いただきました。

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世界規模でアプリ市場を見てみると、Google Play・iOSといったプラットフォーム別の収益・ダウンロードのトレンドに大きな変化はないものの、2013年〜2015年にかけてGoogle Playのダウンロード数が急激に上がり続けています。

全体を見ると使用OSはAppleのiOSの割合が多いのですが、もう一つ大きなトレンドとして、新興国と呼ばれるベトナム、インドネシア、トルコ、メキシコ、インドでダウンロード数が伸びています。収益の伸びで見るとエジプト、アルゼンチン、アラブ首長国連邦、タイなどといった、国が並びます。なかでもアラブ首長国連邦は2014年〜2015年にかけて成長率が非常に高く、今後何か面白いことが起こるかもしれない注目の国です。

アプリ市場において続々と新しいサービスが立ち上がってきている中、2015年に目立っていたのはUberを代表とする配車アプリ、人と人のマッチングアプリ、Netflix、Gyao、huluといった動画のストリーミングアプリ、モバイル端末でショッピングをするMコマースでした。

他にもダウンロード数や時間の使い方、アクティブユーザー数のランキング、課金についてなど、アプリにまつわる様々なレポートが月に何本も出ているそうなので、気になる方はApp AnnieさんのサイトやSNSをチェックしてみてくださいね。

世界的なアプリ市場への興味が高まったところで、セッションがスタート。

トップアプリパブリッシャーのお三方に、各社の取り組みも交えながらそれぞれの自己紹介をしていただきました。

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まずは株式会社パルコにて現在Webマーケティングという部署で、店舗のICTの活用、ハウスカードの運用、スマートフォンアプリを活用したお客様向けのマーケティングを担当されている林さん。

ショップスタッフのおすすめアイテムが買えるマーケット「カエルパルコ」とパルコのブログを統合し、よりパーソナライズしてポイント付与をプラスした「POCKET PARCO」を2015年3月にスタートしました。

次は、無印良品におけるデジタルマーケティング部門のCTO的な役割を担当されている株式会社良品計画の濱野さん。

ネットとリアル区別なく無印良品ファンとのコミュニケーションをはかること、持続的な来店数増とともに売上増をはかること、マーケティング効果の可視化をはかることの3つを目標に掲げ、つくられたMUJIパスポート。ポイントカードの機能や、在庫検索、店舗検索、ニュース媒体としての機能を持つアプリです。

インフルエンザにかかりSkype参加となったのは株式会社東急ハンズの緒方さん。オムニチャネル推進部オムニチャネルコマース課で、新規デジタル施策開発をメインに、ネットストアの運営とその管理組織の運営、ソーシャルメディアの運営など幅広く担当されています。

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お客様の購買動線をネットとリアル別け隔てなく分析し、コミュニケーションできるような機能を搭載した東急ハンズアプリを2014年11月にリリース。会員カード機能、チェックイン機能、ニュースやクーポンの配信に加え、商品バーコードのスキャン&メモ機能で欲しいものリストを管理できるという、特徴的な機能を持っています。

それぞれにアプリに期待していたこと、良くも悪くも期待を裏切られたこと、ネガティブな結果となった時もアプリを継続していくための社内への説得材料、アプリを企画から形にする際に何からはじめると良かったか、内製でやるか外注にするかの決め所について、お話を伺いました。

各社に共通していることは、アプリを導入することにより、購買回数の増加や客単価が上がるといった売上げの向上と、コストの大幅な削減が実現できたということ。

各社ともに実店舗があるので、さまざまな独自のコンテンツを用意することでリアルとネットを結びつけ、アプリならではのプッシュ機能を利用し効率的にユーザーに発信を行うことが、結果的に売上げ増加に結びついています。

アプリを導入した際、気になるのはどの程度ユーザーにアプリをダウンロードしてもらえるかということですが、MUJIパスポートでは、500ポイントをプレゼントするというダウンロード施策以外にも、店頭でスタッフにお客様への声掛けをしてもらうこと、会員になる敷居をいかに低くするかという点を大切にしています。

アプリを企画、開発、運用していくという流れの中で一番大事なのは運用。

うまく結果が出ることも思うような結果が出ないこともありますが、ネガティブな状況になった時も、アプリを導入したことによる良い結果を、数字とともに社内で共有することで運用を続けるための説得材料にし、長い目で見て軌道修正を繰り返しながら各社ともに運用を続けていました。

アプリにさまざまな機能を付加することで、ただ便利にするだけでなく、お客様の買い物時のストレスを無くし、東急ハンズでのお買い物体験自体を再構築したい、という東急ハンズの緒方さんの言葉がとても印象的でした。

アプリを世に出して終わりではなく、そこから生まれる価値や体験を提供しているという意識と、自社はもちろんお客様へのメリットを常に考える姿勢が大切なのかもしれません。

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企画から開発、そして日々の運用にいたるまで紆余曲折を経てきているお三方のトークはとても盛り上がり、会場にいらした方々も熱心に耳を傾け、熱を帯びたイベントとなりました。

登壇してくださった皆さま、ご参加くださった皆さま、誠にありがとうございました。

今後もさまざまなテーマでイベントを開催予定です。EGG JAPAN最新情報はこちらをフォロー

—————— ここから先はセッションメモ ——————

【Q&A】
Q.一番アプリに期待していたことは?
A.(緒方)売上の向上とコストのカット。ポイントカードをアプリ化することによりポイントのつく確率が上がるため購買単価が上がるのではということと、メールマガジンと比べてアプリのプッシュ機能の方がユーザーに届く確率が高いため売上げにつながるのではないかということ。また、チラシやDM、カードの費用の削減ができる。
A.(林)カード売上げの一客単価を上げることと、DMをつくるためのコスト、送るコストといったムダを省くことによるコストの節約。
A.(濱野)契約店舗にお客さんを増やし、プッシュ通知で集客ができること。チラシをなくすことによるコストの削減。

Q.そういった期待を良くも悪くも裏切ったことは?
A.(濱野)ダウンロード施策で500ポイント付与をした際、同時に行なっていたカレーのキャンペーンを利用して500ポイントでカレーを買う方が多く、全体として客単価が下がるという失敗があった。
A.(林)先行してローンチしていたMUJIパスポートがダウンロード数が600万近くいったというので会議でその数字を例として出してしまい、自社アプリのダウンロード数がそこまで伸びなかったこと。
A.(緒方)ダウンロード数よりもMAUというユーザーがどれだけ使ってくれているかの数字を重視しているが、KPAとして提出してる数字が未達だったことに課題を感じた。多分僕らのフォーカスする点がずれていたのかもしれない。店舗で使って便利なアプリというのを目指していたが、便利ということが直接買い物につながるわけではないのでアプローチの方向を見直しつつ来年は販促をかけて行きたい。

Q.当初考えていた期待を裏切るようなネガティブな状況が起こった際に、施策をやり続けるための説得材料は?
A.(林)ダウンロード数は未達だったものの、購入頻度や買い物1回あたりの客単価は倍程度に上がったので、それが会社の中で評価をしてもらえる材料になっている。
A.(濱野)経費の部分が問題になることが多いが、どこをどういじると経費や効率の上げ方の傾向がわかってきたこともあり、修正しながら次をどうするか提案している。成功すればすごい反応があるのは現場が認識してくれているのも大きい。
A.(緒方)ダウンロード数は未達だったものの、チャネルを促すことによって客単価があがる、年間購買回数があがるという結果が美しく出た。分母は想定より小さいが、それはひとつの説明材料になった。コストの部分もプラカードが去年の3分の1くらいになっているので大幅なコストカットができていること。今後はどうやってユーザーを拡大していくかが課題。

Q.最初にアプリやろうと考えた時に何からやっていくのが良かった?
A.(緒方)事前に想定される状況を説明しておくこと。お客様にとってのポジティブとネガティブの洗いなおしと、お客様にどんな機能があればよりハンズの買い物がより楽しく便利になるのかというゴール設計。ポジティブとは買いやすさ、選びやすさ、楽しさ。ネガティブというのは妨げない、ストレスかけない、迷わせない。そのためにアプリで何ができるかというディスカッション。あとはお客様の買い物の仕方を変えたかった。最終的にはお客様に店で買い物かごをもつのをやめてもらいたい。一つ一つメモしておいて後でばーんと届くような買い物体験をしてほしい。政治的な構築としては会員の購買回数をあげるところがゴール設計だが、自社の強みとお客様の課題解決についてのディスカッションは非常に重要だった。

Q.そういうことをやりはじめたキッカケは?例えば海外視察をしたときに刺激を受けた、お客様にアンケートをとったら不満が色々など。
A.(緒方)実店舗がある会社はみな抱えている課題だが、店舗でみてネットで買うという動線が多かったので、逆にネットの強みをうまくいかして、リアル店舗の良さを活かしながらお客さんに買ってもらうために何か考えなくちゃいけないという状況だった。

Q.最初にアプリやろうと考えた時に何からやっていくのが良かった?
A.(濱野)アプリは手段でしか無いので、全体の中でなぜアプリなのかという疑問に答えられるよう、本部とお客様とみんな納得できる絵を描いてあげることが最初。また、現場を盛り上げること。

Q.なんでアプリなの?という疑問への答えはどんなもの?
A.(濱野)企画時点でのスマホの普及率は40%未満だった。カードは発行コストがかかるので、アプリを主軸に追加でカードを発行しようかと話していた。加えてスマホは自分の手元に必ずあるということ、また当時はiPhoneをどう攻略するかというのが重要であったこと、バーコードを素早く提示できるというのが必要だったことから、スマホのアプリでアイコンを押すとバーコードがすぐ出るというのを選択したのが2013年にとった戦略。

Q.最初にアプリやろうと考えた時に何からやっていくのが良かった?
A.(林)うちはもう絵はかけていた。色々なアプリやSNSを試していて、FBでのいいね!やお客様がどういうことに関心をもっているか知ることはすごく大切で、それができるということと、来店時にスマホのチェックインをしてくれるのも4つのOSOサービスとご一緒させてもらってわかっていた。残りはUI、UXの部分で、お客さんにとって使いやすく、良いアプリだと評価してもらえるようなつくり方をするのが一番の問題だった。

Q.アプリをつくることを考えた時に、内製か外注かの選択肢の決めどころ、外注の場合は外注を選んだ理由は?
A.(林)うちは外注。ただデータベースのところとコンテンツをつくるという意味ではテナントさんが毎日更新してくれるショップブログがメインコンテンツなので、そこは内製。アプリをお客様にたいして使いやすく、見やすくする設計をしてくれる方とやる必要があったので外注という方法をとった。外部の方に一緒に考えてもらって練りこんでいきながら、画面を一つつくる時でも喧々諤々がありながら、それに耐えて一緒につくりあげてくれるパートナーとやるというのが大事だった。
A.(濱野)アプリのところに関しては外注にしていて、サーバーサイドは内製というように結構分散してきている。どうやってコミュニケーションをその中へ入れ込んでいくかという観点が絶対に必要。