12月8日(火)に、丸の内フロンティア・ネットワーキング定例会が行われました。

今回のテーマは『壁を突き抜ける!』。

多くのベンチャー起業家が、事業立ち上げ後にぶち当たるさまざまな壁。そんな壁をものともせず、一気に突き抜け成長し続ける起業家の諸先輩方をお招きし、事業についての「これまで・いま・今後」のお話を伺いました。

今回は株式会社QDレーザ 代表取締役社長 菅原充さん、HEROZ株式会社 代表取締役 林隆弘さんのお二方をメインに、IPO支援という立場からさまざまな企業や経営者を見てこられているSMBC日興証券の木村光宏さんにも、スピーカーとしてご参加いただきました。

【今回のトピック】
■ご登壇者様の事業紹介
■これまでの経営ストーリーの中での経営判断について
■質疑応答

まずは登壇者のお二方に、それぞれの事業についてご紹介いただきました。

QDレーザ菅原さん_03

菅原さんが代表取締役を務める株式会社QDレーザは、ナノテクノロジーを基盤技術とした半導体レーザーを開発、製造、販売している会社です。半導体レーザの新しい市場を作り出すことを目指して、光通信・光インタコネクト、レーザ精密加工、センシング、網膜走査型レーザアイウエアの四つの事業を進めています。 光通信・光インタコネクトの分野では、量子ドットレーザの世界で始めての開発と量産に成功し、2014年にIEEE Photonics Society Aron Kressel Awardという光の分野で栄誉な賞を受賞しました。

量子ドットレーザとは、コンマ数ミリという極小のチップにナノサイズの半導体の微粒子数百万個も仕込んだ新しい半導体レーザーです。

網膜走査型レーザアイウエアは、網膜に直接レーザで映像を投影する技術。ミラーでスキャニングし、RGBのレーザを使用して網膜上に映像を走査します。細いレーザビームを用いて網膜に直接画像を送り込んでいるため、人間の眼の焦点調整機能や焦点位置によらず鮮明な映像を見ることができます(フォーカスフリーと呼びます)。
矯正めがねの効果が無い弱視の方々でも視力の改善ができたり、英語のミュージカルを鑑賞しながら、その翻訳が空間に浮かんでいるように見えたり、これからの可能性を大いに感じる技術です。

HEROZ林さん_03

林さんが代表取締役を務める HEROZ 株式会社は、電王戦でのプロ棋士との対局で話題を呼んだ「ponanza」というコンピュータ将棋ソフトを開発したエンジニアなどが所属する会社で、 人工知能(AI)技術を活用したストラテジーゲーム、およびスマートフォンアプリ等の企画・開発・運営を行っています。 3年間の売上高成長率1,969%を記録し、2014 日本テクノロジー Fast50成長率第1位受賞、また2014 Red Herring Global Top 100 Winnerを受賞しました。

頭を使うゲームのプラットフォームでeスポーツ化することを行なっており、AIのコア技術をフィンテックやヘルスケアの分野に展開を広げていて、特にフィンテックではさっそく成果が出ています。

お二方の事業紹介が終わったところで、日興証券の木村さんにもご参加いただき、セッションがスタート。

日興木村さん_03

今回のテーマは「壁を突き抜ける!」ということで、経営における節目節目でどんなジャッジやアクションをしてきたか、今後のアクション計画をどう考えているかを中心にお話を伺いました。

企業独立されたきっかけについて、独立した時のヒト・モノ・カネはどんな状況だったかという突っ込んだ質問や、苦労したこと、それをどうやって克服したかなど、聞きたくてもなかなか聞けないような内容に、会場の皆さんも真剣に話に聞き入っていました。

お二方とも、苦労した経験をきっかけに、自身の足りていない視点に気付いたり、新たなサービスを思いついたりと、苦労をとても前向きに捉えられていたのが印象的でした。

菅原さんは、事業を立ち上げてからのこの10年の中で、光通信、加工レーザー、オレンジや緑色のレーザー、そして網膜へ直接映像を送り込むレーザーを用いたアイウェアなど、部品からはじまり製品、そしてエンドユーザーへと事業を展開してきています。林さんは、ゲームの中でもさらに自社の強みを活かし、AIを使って差別化を図ろうとしています。

また、話の流れから、ベンチャー企業の良し悪しは情報の発信力でわかるという興味深いお話もありました。自信の有る無しが発信力に如実に表れるからだそうです。そんなシンプルな現象を利用して、ビッグデータを元に、上場企業への投資においての新しい指針をつくれるかもしれない、と林さんはおっしゃっていました。

IMG_5232_03

これまでIPO支援を通して、さまざまな企業や経営者を見てきた木村さんからは、突き抜けられる経営者の特徴として、素直で人の話をよく聞きフットワークが軽い方が多いというお話がありました。自分の我を通すためではなく、事業を成功させたいという目標を常に見ているからこそ、周りからの声にも柔軟に対応できるのかもしれません。

最後に、お二人が突き抜けるために大切にしていることでセッションが締めくくられました。

「周りの人の意見を聞きながら自分の頭の中で構築するのが好きなので、そこをこれからも突き詰めていきたい。」(菅原さん)

「何かを突破する、突破力をつけるためのひとつの礎になっているのは、一番を目指すということ。これはつまり集中と選択で、どれだけ他を切り捨てられるかということではないか。何かを突破するときには、そういった取捨選択がすごく大事だと思う。」(林さん)

今回来場者からの質問はありませんでしたが、質問の代わりに「とても興味深く、楽しい時間を過ごせた」と嬉しいご感想を頂きました。

登壇してくださった皆さま、ご参加くださった皆さま、誠にありがとうございました。

—————— ここから先はセッションメモ ——————

【Q&A】
Q.企業独立されたきっかけは?
A.(菅原)量子ドットレーザーを事業化する事業部がなくなってしまったことが理由のひとつ。10年研究をやってきて量子ドットの物理的な研究はほぼ終わっていたこともあり、研究者がそのまま事業するのも面白いと思い、環境に後押しされて判断した。
A.(林)リーマン・ショックの後で信じられない不景気で厳しい時代に渡米し、Facebookといった勢いがあり伸びている企業に刺激を受け、全力で魂をかけてできることは自分でやろうと思って始めたのがきっかけ。

Q.独立した時のヒト・モノ・カネはどんな状況?
A.(菅原)富士通のコーポレートベンチャーファンドから支援を受けた。コア技術である半導体材料を自前で製造し、チップ化・モジュール化は外部でやるという水平分業モデルを評価して頂いた。研究所出身者だけでは事業ができないので、必要な人材は外部から(主に日本の大企業から)ヘッドハンティングしてきた。

Q.そのお金はCVCなどから当面は支援すると約束も取り付けていた?
A.(菅原)5年間は製品ができなかったのでとても厳しかった。

Q.事業開始時から成長スピードやスケーラビリティをどの程度意識して、やりたいことやビジョン、どういうビジネスモデルでスタートされたのか?
A.(菅原)光通信・光インタコネクト用の量子ドットレーザを開発、事業化しながら、同じ製造ラインで異なるアプリケーションに向けた新商品を作ることを考えた。それがある程度うまくいって利益が出るようになった。さらに、現在では、バリューチェーンをできるだけ川下に下って、付加価値を拡大することを念頭においてる。それが網膜走査レーザアイウエア。せっかく他が真似できないデバイスがたくさんあるので、それをもとに、いかに付加価値をつけるかを考えている。
A.(林)はじめはスマートフォンのアプリから。スマホの課金体系ができていなかったので、ガラケーも一部やる形で創業した。差別化ができていないと、一時的なブームで終わってしまうので本来の強い部分や、AIをつかったアプリケーションを使用して、圧倒的な差別化できるもの、かつ市場性があるところをターゲティングして攻めているというのが今のフェーズ。

Q.QDレーザの設立から10年間の成長の道のり、変遷、売上のスケール感や10年のトピックのお話については?
A.(菅原)光通信用量子ドットレーザが商品化されたのが2009年。その後、次の商品である加工やセンシング用レーザが出来上がってやっと事業が伸びてきた。本日のテーマのスケールという観点では、いかに新しい事業プラットフォームをつくるかを考えている。それが丁度木村さんの目にとまりご支援いただいているところ。
A.(林)当社の事業モデルがアプリケーションを主体にいろいろ展開している。スマホのアプリは人気アプリになってくるとアセット型になってくる。そうなるとコストが掛かるのは人件費とサーバーだけなので、基本的にはその人員構成さえ調整すれば非常に利益構造が見えやすい。うちの会社も基本はサービスを2,3個起こせば数億の利益が残るような構造になってきているがそれだと面白く無い。仕事中身は夢がないとやっていけないから、未来への投資という部分が結構かかる。

Q.菅原さんは最初の5年間製品ができなくて大変だったというお話があったが、具体的に何が大変でどのように克服をしたのか?
A.(菅原)いろいろあったが、量子ドットレーザが光通信の規格に合わなかったのが一番大変だった。その後、規格に合う市場を発見して、この事業も立ち上がってきている。CPUとメモリを光でつなぐ光インタコネクトの分野ではトップを走れると思う。

Q.林さんの苦労したことは?
A.(林)人工知能の強いAIを研究しているエンジニアをどんどん勝手に招聘していたが、その人達や持っているコア技術を生かすこと、生かして貨幣に変換するスピードを考えた時に、それを可能にするのはエンターテイメント性じゃないかと。例えば将棋ウォーズに羽生さん並の手を100円で買える機能を搭載して、マネタイズを始めたのがひとつのきっかけ。課金ができないと商売にならないので、そこが苦労した点だが逆に良かった。

Q.一気にスピードがついた、事業の展望が開けたような、そんなきっかけになったアクションや刺さった打ち手などは?
A.(菅原)これまでにやってきた光通信をはじめ、加工用のレーザー、オレンジや緑のレーザー、今回のアイウェアに関しても、だいたい当たっている気がする。アイウェアを爆発的に成長させて上場を成し遂げたいと思う。

Q.その打ち手の判断基準は?
A.(菅原)マーケッティング。誰にどんな価値を届けるかを把握することが大事。
A.(林)現状はまだまだこれから、まだエッグの状態だなというのが正直な感想。伸びてきたところに関しては、マーケットの追い風が大きいのかなというところがあるので、市場の成長面にあわせて、普通の経営をしていればそれなりに伸びるんじゃないかなと思っている。

Q.今スマホゲームには追い風が吹いていて、その中でいかに面白いコンテンツを作れるかで進んでいる?
A.(林)ゲームに限らない部分はあるが、スマートフォン課金市場も含め、自社の強みを活かした上で、その大きな流れの中でどこまでチャンスをつかめるかというところ。

Q.今後の事業展開は?
A.(菅原)網膜に直接映像を送るアイウェアは、他の企業が開発している液晶型アイウエアとは異なり、視力に依存せず網膜に直接情報をレーザで送り込むという新しいうコンセプト。ゲームチェンジャーになると思う。弱視者支援にとどまらず、完全AR機能を生かした作業支援、スマートグラスに大きく展開するはずだ。眼鏡屋さんで眼鏡の注文をした時に、IT機能を欲しいといえば、ついてくるようなところまでいく。そこまでおくにはあと3年。
A.(林)当社の場合は強みはAIにあるので、例えばチェスや囲碁といった人間が難しいと思うゲームを、将棋と同じような雛形でできるようにフォーカスしていくのが一つの形だと考えている。2020年のオリンピックに合わせ、スマホを用いたマインドeスポーツみたいなものを手がけていきたいと思っている。強みを活かしてインテリな人を囲っていきたいと思う。

Q.今後の新しい領域としてフィンテックやヘルスケアの市場を狙っていこうと思われる理由は?
A.(林)今現在人工知能の市場っていうのは今年現在で60億ドルくらい、2025年になると1200億ドルくらいまで伸びてくる。やるからには規模が大きなところで生活を変えるくらいのところまで攻め込みたいという思いがあるので、フィンテックとヘルスケアの分野はちょうど弊社の技術に注目していただいたという経緯もあり、どこまで伸ばせるかまずやってみようと。技術をゲームの分野以外にいかしていくというのを楽しくやっている。

Q.具体的にはどんなイメージ?
A.(林)例えば金融機関だと、不正出金対策ができたり、FacebookやTwitterといったSNSで発信されてくる情報を読み解くと、会社の注目度がわかる。新しい投資スタイルが確立されつつあるなかで、流れてくる情報・ビックデータをAIで学習することができると、今東証に上場している銘柄の中から特徴を読み取り、一つの投資の指針になるかと。

Q.木村さんがこれまでたくさんのIPO支援をした中で、突き抜けられる経営者とそうじゃない人との違いや特徴、傾向値みたいなものは?
A.(木村)傾向値というか、自分たちが応援したくなるかどうかというのが一番。例えば菅原さんは、会った瞬間にこのビジネスはすごく面白いと思って、自分たちも一緒の舟に乗っているような気分で応援するので投資家にも一生懸命に売り込みに行くということになると思う。大成されている経営者の方は、素直で、人の話をよく聞き、フットワークが軽いというのはあると思う。頑固すぎたり意固地になりすぎていると、いざ何かあったときに少し立ち直るのが難しかったりすることがあるんじゃないかなと。

Q. ユニコーン、メガベンチャーについてどう思うか?
A.(菅原)QDレーザは、網膜走査技術に基づく事業をプラットフォーム化できれば、結構良い線に行くのではないかと思っている。補聴器が1兆円の市場があるので、視力の弱い方が本当に見えるものを作れば、数兆円規模の大きな市場形成も可能だ。ユニコーン企業になるということは意識している。
A.(林)ユニコーンとは、10億ドル以上あるというキーワードになっている気がする。ユニコーンは角が出ていて尖っている。尖ったことが成長市場で、ファーストムーバーでいければユニコーン企業になっているなというのが今の印象。そのフェーズを狙うにはやっぱり尖った+世界を変えるというところを超えた会社、例えばイーロン・マスクだと更に上の1兆円という規模が狙える気がする。だから僕らもまずは2020年位までに時価総額が1,000億規模に到達したいと思っている。そのために今どう動くか、どこまでのことをやるか、逆算で考える必要性を感じている。

Q.創業当初の熱い思いやビジョンを維持するにはどうしたら?何か工夫しているか?
A.(菅原)元々しつこい性格なのと、結構こつこつやるのが好きなので、そこはあまり心配したことはない。
A.(林)やっぱり好きなことをやるというのが熱意を続けるパワーになるんじゃないかなと。僕個人もそうなのでそれはすごく思う。熱を失ってしまうと0になってしまうので、どこかしらで熱をもっておけばクールダウンしてもいいのではないかなと思っている。

Q.最初に考えたビジネスプランが、ちょっと違ったんじゃないかと思った時に方向転換をする判断基準は?
A.(菅原)ってみてダメだったらやめるしかないので、そこはスパっとごめんなさいと言う。
A.(林)そもそも事業のビジネスモデルは常に変わっていくものなので、変わる前提で考えている。ただその時に、自分たちが目指す起源点みたいなものが大事だと思う。

Q.最後に、簡単に突き抜けるために大切にしていること、必要なことなどは?
A.(菅原)自分の頭の中で技術や事業や未来を構想するのが好きなので、そこをこれからも突き詰めていきたい。僕らのイノベーションで世界中の人が豊かになり、幸せになればと思っている。
A.(林)何かを突破する、突破力をつけるというひとつの礎になっているのは、1番を目指すということ。これはつまり集中と選択で、どれだけ他を切り捨てられるかということではないか。何かを突破するときにはそういう取捨選択がすごく大事だと思う。