11月12日(木)、日本ベンチャーキャピタル株式会社主催の元、シリコンバレーでM&Aに関するファイナンシャル及び法務アドバイザリーを提供されているWoodside Capital Partnersから墨田修作さん、Squire Paton Boggsから下田範幸さんをお招きして、スタートアップ企業独特のM&Aの実務上・法務面での課題と対策について学ぶイベントをEGG JAPANにて開催しました!

本日はそのイベントの様子についてレポートいたします。

【今回のトピック】
■M&A実行プロセスと課題
■M&Aの法務とLegal Due Diligence の基礎知識
■スタートアップ企業の買収に関する討論・Q&A

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たくさんの聴衆が集まる中、まずはWoodside Capital Partnersの墨田修作さんより、「M&A実行プロセスと課題」についてお話がありました。

シリコンバレーにおいてM&Aはする側・される側相互にメリットがあるものとして広く受け入れられています。それに対し、日本ではスタートアップ企業を買収するという選択肢は非常に限られたケースでしかありません。そこには明らかに大きな成長力の差があります。

そんなM&Aを取り巻く状況をふまえた上で、オープンイノベーションを成功させるための3つの鍵や、実際のスタートアップのM&Aのプロセス、プロセスにおける3つの問題点といった具体的なお話がありました。

戦略とリスクマネージメントにおいて一番重要なのは、買い手が価値創造のアイデアを明確にして素早い意思決定をすること。それはリスクをともないますが、その分大きなリターンの可能性もあります。リスクを緩和する方法もある。

これなら絶対大丈夫というやり方はなく、失敗から学びながら、実際のノウハウと実践を積み重ね、成功の定義を決めていくことが大切だ、と話を締めくくられていました。

shimoda

2人目の講演は、Squire Patton Boggs弁護士の下田範幸さんによる、M&Aの法務とLegal Due Diligenceの基礎知識について。

現在M&Aやベンチャーキャピタルファイナンスのお仕事に関わられているという下田さんからは、弁護士の観点からM&Aにおける法務上の話や契約上の話がありました。

M&Aには、資産(ビジネス)買収、株式買収、合併契約による法定案件という3つの方法があり、それぞれにメリット・デメリットがあり、一言で合併と言っても順合併・逆合併・三角合併・逆三角合併といういくつもの種類があります。

専門用語の解説も交えながら、M&A取引における弁護士の役割や典型的なステップについて説明をしていただきました。

デューデリジェンスにはビジネスデュージェリデンス、会計士が行なうファイナンスデューデリジェンス、弁護士が行なうリーガルデューデリジェンスがあり、リーガルデューデリジェンスの中でも、特許弁護士などが関与する知的財産権デューデリジェンスが一番重要とされています。

デューデリジェンスをしてはじめて理解できるリスクがたくさんあります。例えば保証問題になった時のために備えて、エスコにいくらお金を入れておくべきかなどは、デューデリジェンスをしないと評価できません。

M&Aの法律やデュージェリデンスについて正しい知識をつけ、リスクマネージメントをしていきましょう。

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イベント後半は、日本ベンチャーキャピタル株式会社の平川敦士さん司会進行の元、スタートアップ企業の買収に関する討論が行われました。

ひとつ目のテーマは「買収の具体的な成功事例と失敗事例」。

開発の継続投資をきっちり行うことで主要商品に育った、自社にないソフトを獲得したことでビジネスが拡張した、買収したけど市場が立ち上がらなかった、新しい技術を獲得したが技術課題を解決できなかった…など、一般論だけでなく具体的な事例がでたことで、より実際のM&Aの現場をイメージしやすくなったのではないでしょうか。

会場の雰囲気も少しずつ和やかになっていきます。

ふたつ目のテーマは「キーパーソンを雇用し続ける方法について」。

スタートアップの場合は特に知的財産権が一番重要ですが、もうひとつ重要なのは人材。合併する際にキーパーソンとの雇用契約締結をクロージングコンディションにすることはよくある話なのだそうです。

キーパーソンに在籍し続けてもらうためには、契約の中身を魅力的なものにすること、そしていかに買収後も魅力的な会社であり続けるか、というのが実際の現場において大切なことです。

最後のテーマは「投資先やM&A先をどうやって見つけるか」。

基本はまず、“自分が本当に必要としているものは何か”を決めること。そうすることで、特定の技術の会社などが絞られてくるので、その先はWEBで探す、ベンチャーキャピタルから情報をもらう、インキュベーション施設に入っている会社…といったものを組み合わせて探していきます。

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そしてここからは会場質問タイムへ。

日本とアメリカの会社の違いについて、スタートアップの価値を高めるにはどうするか、なぜ日本の企業は海外への投資やM&Aをしないのか、日本の企業のどういったところに魅力を感じるのか、など参加者の方から積極的に質問が飛び交いました。

ひとつの質問がまた別の質問に発展するという場面も見られ、とても実りある時間となりました。

登壇してくださった皆さま、ご参加くださった皆さま、誠にありがとうございました。

今回はM&Aに関するイベントでしたが、今後もさまざまなテーマでイベントを開催予定です。

—————— ここから先はセッションメモ ——————

【Q&A】
Q.日本の会社では退職の際に誓約書を欠かされるがアメリカではどうなのか?
A.アメリカでも雇用契約書と一緒に秘密保持契約書は結ばされる。トレードシークレットを持ち出せばトレードシークレット法違反になるし、秘密保持という部分であればシリコンバレーであっても同じ。ただし、人材の流動性が確保されている理由の一つが競合禁止義務というのを課すと、それが違法になるというのがある。従業員がやめたらコンペティターで働いてはダメというのを義務付けるのは違法になるため、今までの自分の会社のコンペティターで翌日働いているというのがシリコンバレーでは起こる。それが人材の流動性が確保されているということで、だからといってトレードシークレットを持ちだしていいということではない。しかし頭の中にある知識経験をいかすというところがトレードシークレットに違反しているのかというと不可能なところがあり、そういう意味では競業禁止を犯してはいけないということにより、確保されている人材の流動性が、事実上知識や経験の流動性にもなっている。明確な形でトレードシークレットを盗みだした事実が証明されれば裁判されて負け損害賠償の対象になるが、実態としてそれは非常に困難。

Q.それは日本とアメリカでどう法律が違うのか。
A.アメリカ・カルフォルニア以外では、競業禁止義務を課しても、合理的な期間内や地域内であれば許される。日本でも同じ。
カルフォルニアでは禁止されているため、だからこそ人材の流動性が確保されているのでは。あとは個々人の自主的な判断で、情報が流れるのが事実。

Q.なぜ日本の企業がシリコンバレーも含め、海外への投資やM&Aをしないのか?スタートアップの価値を高めるのはどうすれば?
A.スタートアップの価値をあげるのは、競争環境をつくること。1つの企業に対して買収したいという企業をどのくらい集められるか。その中で複数の選択肢をスタートアップに提供できたら、スタートアップにとって一番価値の高いものを選べる。あとはタイミング。もう一つの質問に関しては、国内でバリエーションするところがないから。日本のスタートアップもM&Aを目指すべき。
そういうエコシステムを支えているのは企業。企業がそういうスタートアップを買収していくという仕組みをつくれば日本でやればいい。日本でスタートアップを生み出せればいいが、それが無いのでシリコンバレーや北欧にいく。日本をさけているわけではない。

Q.バリエーションが高すぎるのがどうか。シードステージでこれからスケールしなければならないのにそうやって高額で買うのはどうか。
A.基本的な状況からいうと金があまっていて、投資家がバリエーションが高くなるほど投資しすぎるというのが事実。その結果、IPOを出している時点のバリエーションが一番高く、買収してから購入価格にもどるのに2~3年かかる。高いお金で買い過ぎると成功の可能性が非常に下がるため、企業が考えたシナジーと出せるお金というのを考えて買う企業が値付けすべき。インキュベーションにおける買収というのはあまりアーリーステージでっていうのはないが、リスクの中で、マネジメント的なリスクというのは見やすい。難しいのはエグゼキューションリスク。買収した企業がその技術をつかって市場を取れるという自信があったらそこで成り立つ。

Q.アメリカのベンチャーの若い経営者がどういったモチベーションでイグジットを目指しているか。リレーションがうまくいった場合に、日本企業のどういったところに魅力を感じているか。
A.一般的な言い方はできないが、魅力は個人、経営者そのものだと感じる。日本とアメリカでスタートアップの社長さんに会った時、明らかに違いを感じるのは、日本の方は社会のため、アメリカの方は会社を売るためという答えが帰ってくる。そこが明らかに立ち上げの時のモチベーションが違うところではないか。リレーションの話は、新しいビジネスを自分で立ち上げて成功してイグジットするところまでが楽しいと思う人種がいる。実際に私が担当した案件ではかなりいい条件で雇用契約書を提案して、3年契約ってことでサインしたけど1年半でさっていった人がいる。買収した側はそういう類の人達が残ってくれるという前提にしないほうが安全。スタートアップを起こした人だけに期待していると大体逃げられる。ファウンダーの持っているスケールというのは新しいものをつくっていくスケールなので、一旦できあがったものを維持していくというのは、ファウンダーがいなくなってもなんとかなるが、さらに次のレベルまで開発を続けさせることができるのかは一番難しいところ。やっている最中でどこまで受ける側の価値観にいかに近づけるかということしかない。そこは相手次第で、一般論で通用することは無いと思う。

Q.どういう取り案の分け方があるか。コンペがあったほうがいいという流れをどうやって起こしていくのか。コンペ存在をどう伝えればいいのか。
A.われわれがどうやって売っているかというだけの話ですが、売らなきゃいけない環境というのがいくつかあり、一番多いのは投資家の持っているファンドがクローズしなきゃいけないタイミング。レート制の場合、株式の所有形態からいうとベンチャーキャピタル側が多数派になっているので経営陣の意見が通らない場合が多く、出資者側の都合で売らなければならないことがある。そういう時にどうやってコンペに持ち込むかは、バンカーの腕次第。非常に気をつけてみているのは、そのスタートアップがどのような企業にとって一番価値が高いのかというところ。できるだけ短期間で複数の候補企業に興味をもっていただくために手を打ち、一番ふさわしい相手をみつける。