8月7日(木)、シリコンバレーでご活躍の経営コンサルタント 渡辺千賀さん (実は、”とある事情” でパリからお越しいただいたのですが) をお招きして「シリコンバレーの最新動向」をテーマにEGG JAPANランチミートアップを開催しました!

【今回のトピック】■シリコンバレーITベンチャー企業の動向事情 ■VCも二極化の時代を迎えている ■ITベンチャー企業と積極的に連携する大企業 ■シリコンバレー バブル期の始まり?

オープンソースやクラウドの活用により、低コストでの起業が可能になるなど、「起業の障壁」が以前に比べ低くなってきたことで、アーリーステージのベンチャー企業が世界中で数多く生まれ、20年前とはケタ違いのスピードで成長するベンチャー企業も増えてきました。そして最近では、シリコンバレー発のITベンチャーが世界で活躍する時代を迎えています。 多くのベンチャー企業が生まれて成長していく中で競争は激しさを増していく中で、ベンチャーキャピタル(VC)の投資手法にも変化が見えてきており、

たくさんのベンチャー企業を囲い込み、その中から最も優秀な企業に出資を実行する ↓ ベンチャーの多産多死が進む

こんな現象が目立つようになってきているそうです。さらにシリコンバレーでは、投資実行基準として「創業者がエンジニアである企業であること」としているVCもいるくらい「技術者至上主義的な風潮」があり、その風潮はベンチャー企業の枠を超えて、子どもの教育にも派生しているとのこと。起業しやすくなって多くのベンチャー企業が生まれる分、ベンチャー起業に求められるレベルの高さも上がってきているということのようです。

一方、VCサイドもシードからミドル、レイターなどステージに分けたポートフォリオターゲットを持つVCやいわゆる”巨大VCファンド”が混在するなかでVCの「勝ち組」と「負け組」の二極化という現象も見え隠れしてきているようです。

また、そのような中で大企業もベンチャー企業との取り組みを活発に行うようになってきており、提携や買収を実施して、自社サービスの幅の拡大を成功させた事例も多く出てきているようです。大企業がこのような取り組みを行うなかで重要なのは、単発ではなく、専任チームを作るなどして年間数社の企業買収を継続的に実行していくこと。でも、それを日本企業が実践しようとした場合、キャッシュの買収になり、息が続かないことが多いようで、アメリカ企業と比較して構造的に無理があるという見方もあるようです。 ベンチャー企業が増加して非常に高いバリュエーションでディールが取り交わされる中で、シリコンバレーにもバブル期到来かと言われていますが、「シリコンバレーのバブルはまだ始まったばかり」と話す渡辺さん。会場からは、「ものづくりベンチャーは日本企業にとって脅威か?」「ベンチャー企業にとって業務提携はどう見られるのか?」など具体的な質問も飛び出し、活気ある濃密な1時間となりました。 セッションの前後では、ランチをとりつつ、参加者のみなさん和やかな雰囲気で会話が弾んでいました。

*『MeetUp@EGGJAPAN』とは、ITを始めとした各業界において第一線で活躍する方を講師にお招きし、少人数でのインタラクティブなセッションと、参加者同士との交流をご提供するミートアップです。今後も不定期で開催していきますので、こうご期待ください! EGG JAPAN最新情報はこちらをフォロー

 

—————— ここから先はセッションメモ ——————

テーマ【シリコンバレーの最新動向について】 ◆シリコンバレー発のIT企業がメインストリーム化してきている! シリコンバレーのIT企業がメインストリーム化してきていると言われている。日本ではソフトバンクや楽天が伸びているが、まだトヨタ等と肩を並べるほどではない。しかしシリコンバレーでは、時価総額を縦軸、利益を横軸としたこの図を見ても、これまでトップだった重厚長大な企業に代わり、現在のトップはアップル。時価総額だけでなく利益でもGEやトヨタを抜いていて、IT企業のステータスが変わってきているように思う。 ◆アーリーステージのベンチャーは多産多死

オープンソースやクラウドの活用により、起業コストが低減し、誰でも会社を作れるようになった。コードが書ける人なら、生活費以外に月5千円〜1万円あれば起業が可能となり、ハード面でも回路の設計図がオープン化、3Dプリンタの普及など、数多くのベンチャー起業が生まれる環境が整ってきた。また、20年前と比較しても、桁違いのスピードで成長する企業が確実に増えてきている。例えばAirBnBのケースをみると、2008年に起業、2014年現在60万件の物件が登録、そしてこれまでに1500万人の利用実績を持っている。また、2004年に設立したPalantirは、今年の契約総額見込みが1000億円を超えると言われている。

◆変化の時を迎えているVC 前述の話は、ベンチャー企業側の話だが、それに伴ってVCにも変化が見られるようになった: 1.アーリーステージに特化したシードアクセラレーター/インキュベーターの増加 Ycombinatorや500Startups、TechStarsなどは、年間何十社も育ててダメなところは切っていくような仕組みを採用している。とにかくたくさんの企業を支援して歩留りを上げていく。このようなアクセラレーター型のVCは、世界で200以上存在すると言われている。 2.VCの「勝ち組」と「負け組」の二極化傾向 その一方で、昔からあったトラディショナルなVCは減少傾向にあり、2000年に1022社あったアクティブなVCが、現在では462社にまで減少している。最近はバブルだバブルだと言われているが、それでもVCがファンドレイズで苦労するケースは多い。でも、ファンドVCによっては、独自で資金調達を成功させていて、例えばAndreessen Horowitzは、始まって3年ちょっとになるが、4200億円の調達に成功している。VCの世界での「勝ち組」と「負け組」が明確に分かれてきている。 3.新しい形のVCの誕生 アクセラレーター以外でアーリーステージ寄りのVCのもう1つのくくりとして、BlueRunやTrue Venturesなど、シードステージ以降のベンチャー企業に特化して投資を行うVCも出てきている。 こうした流れの中で、ステージに関わらず優良企業に積極的に投資を実行する”巨大ファンド”と言われる、VCもどんどん登場している。なかでもAndreessen Horowitzは、「ファウンダーは技術者に限る」として、その他のマーケティング、人事、経理などビジネス展開に必要なファクターは、Andreessen Horowitzが持つオペレーションチームがサポートするという手法をとっている。 また、最近のシリコンバレーでは、Reading、Mathの他にCodingを基礎教育の一環として組み込んで「エンジニア」の育成に注力する学校が出てきている。”プログラミングができる” ということが必須要素になってきている風潮が出てきている。 ◆M&Aは、日常業務の一環 そしてもう一つ興味深いのは、多産多死の風潮が見え隠れしているベンチャー業界では、大企業によるベンチャー企業のM&Aが日常化してきていること。2013年の大企業による米国の未上場のテック企業買収実績を見ても、YahooやAutodeskなどテック系の大企業がより多くのベンチャー企業を買収していることが分かる。 ◆ シリコンバレーのITバブルは始まったばかり 現在のシリコンバレーの状況を、バブルだと言う人とそうではないと言う人、様々な見方がある。渡辺さんの見解では、バブルが始まったところかな、と捉えているとのこと。1999年のバブル期と比べると、2013年ではまだIPOの数は73%減少したままで、会社の市場価値トータルにおいても、S&P500のうちにテック系企業の価値は、1999年では35%を占めていたのに対して、現在は19%にすぎない。 PERも、S&P500の全平均が19だとすると、アップルで16、グーグルで30と、テック企業がずば抜けて世の中を牽引しているとは言い難く、VCの数も減少傾向にあるということで、数字を中心に見ると、そこまで実態がないようなバブル期に突入している感じはない。 日本に比べてシリコンバレーでは、数億円規模の増資を行うシリーズAラウンドの実施がすごく難しい状況にある。エンジェルラウンドと呼ばれるエンジェルインベスターからの増資は比較的成功率も高いが、VCからの増資については、苦戦する企業が少なくない。そのため、エンジェルインベスターだけで2億円近く集める会社もあり、ベンチャー企業にとっては非常に厳しい道のりになってきている。また、シリーズAまでいくとその企業の今後の成長性がかなり見えてくるため、成長性が低いと判断された企業にとっての増資はとても難しい。ただ、成長性が低いと言っても、現在の市場で「勝っていない」というだけで「ダメ」な企業ではないケースもあり、苦労をすることもしばしばあるようだ。 ただこのバブルは、アーリーステージの企業と既に何千万人ものユーザーを抱える企業という2つの極端に分かれている企業の間で始まっているものであり、1990年~2000年前後にあったような、成長性や質の善し悪しに関わらず数百億の増資を成功させてしまうような企業は存在しない。  

[Q&A]

Q. ベンチャー企業のバリュエーションが益々高騰していく中で、テック系でない企業がテック系ベンチャー企業を買収して、本当に正当化できるのか?また、買収後もテック企業を自社の中で存続させることができるか? A.この質問のポイントは2つ。 1.そもそもテック企業のバリュエーションは本当に高いのか 2.本当に高いとして、その高いバリュエーションで企業買収をした結果、そのベンチャー企業が持つ成長スピードを維持しながら相乗させていくことができるのか その例の1つとしてあげられるのが、ウォルマート社が設立したWalmartlabs。 ウォルマートと言えば昔からある重厚長大企業の企業だが、過去4~5年で(公表されているものだけでも)13社のベンチャー企業を買収しており、その中には300億円で買収したケースもある。これらのなかには、プロダクト自体の買収を目的としたものではなくチームの買収を目的としているケースも多々ある。同社は現在Eコマースの売上げが1兆円を超えてアマゾンに次いで今年2位になると言われており、だからこそ、こうした優良な企業を継続して買収することで社運をかけたEコマース事業の強化を図っている。 また最近では、日本企業も米国のベンチャー企業の買収を試みる企業が出てきているが、単発の企業買収で、大きなインパクトを得ようとするのは難しい。最低でも、年間2社程度のペースで買収し、よいものは取り入れダメなものは切り捨てていく。巨大案件1つで力尽きるのではなく、ある程度繰り返していくことが成功の鍵。   Q.「創業者はエンジニアに限る」という風潮とのことですが、エンジニアではない人が、他人にアウトソースして立ち上げる事例はありますか? A.ないことはないが、うまくいっているケースは少ない。なんとかしてエンジニアを共同創業者として捕まえることが重要。 ちなみにシリコンバレーでは技術系と非技術系で給与レベルが異なり、技術系の職種の方が給与が高い。今後この差はさらに広がっていくのではないかと思う。   Q.ここ数年でシリコンバレーに進出し、成功しつつある日本の企業はありますか? A.LINEはアメリカでもユーザーがいる。Open Network Labの後Ycombinatorに参加して、サンフランシスコを拠点に起業をした福山 太郎さん創業の “Any Park” は、注目すべき成長企業の一つ。 その他にもシリコンバレーでチャレンジしようとして、観光ビザ3ヶ月で来ている人は大勢いるが、その後ビザを取得できる人はすごく限られており、ビザが取れないということで敗退している人もたくさんいる。日本人が創業した会社も数社参加した実績がある500Startupsを見ても、プログラム終了後にシリコンバレーに残る企業はは1〜2社程度。そもそも最初から本当にシリコンバレーに拠点が必要なのか、という疑問もあるわけで、シリコンバレーを拠点に起業できるかどうかという点については、日本人の能力が低い高いという問題以前に、単にビザの取得が難しいという現実問題がある。   Q.日本の大企業のシリコンバレーでのM&A成功事例があまり無いように思いますが、どう見ていますか? A.グローバルなM&Aを担当していた人によると、いきなり大きいものを買うようなマネはせず、助走のように細々と買うことが重要であると。1回限りのプロジェクトチームではなく、M&Aの担当チームを社内に作り、継続して世の中の動きを見て、1年に1回は買い続ける姿勢が必要。一方で、巨額のM&Aをしても息が続かない企業があるように、構造的な無理を指摘する見方もある。というのも、アメリカでは自社株を使ってM&Aをするケースが多く、そのために会社の株価を上げることに尽力するので、最終的に自身のリターンになるのであれば株主もこうした動きには賛同してくれる。でも日本ではこのようなM&Aの進め方は認められにくく、結果キャッシュで買収することを試みるわけですが、全てキャッシュで買収するのは難しい。なので、日本の企業も、日本での上場はワンステップとして、ある程度の規模になった時点でアメリカで上場して自社株でM&Aをし続けることが必要なのではないかと思う。   Q.ものづくりのシードアクセラレーターが増えていて、日本のものづくりにとって脅威かと思うが、現地でどう見ていますか? A.今のアメリカのメーカーの状況を見ると、まだ極めて早い段階のように見える。5年〜10年経つと脅威になるような企業が出てくるかもしれない。ものづくりの中でも自動車周りがそれなりにホットですが、凝り性でオタクな部分は日本人にかなう人はあまりいないと思うので、高付加価値を生み出せるものに特化した分野は日本は優位だと思う。その他の例でいうと、最近日本企業ではニトリやユニクロなどのリテール系が頑張っている。真剣にアメリカ展開しようとしているのを、シリコンバレーにいて感じる。   Q.シリコンバレーに、日本企業からゲーム、大企業、メーカー等が進出しているが、M&A以外で成功しているところはありますか?ベンチャー企業にとっては、提携や発注だけでは結びつきが弱いと見られるのでしょうか? A.CVCは、世界的にほとんど成功事例がない。なかでもそれなりに成功している例として、GoogleとIntelが挙げられるが、この2社の特徴は、会社の本業とのシナジーを考えないという点。本業とシナジーを生ませつつ、且つフィナンシャル的にも成功させようとする日本企業のスタイルでは難しい。 だから大企業やメーカー企業は、投資に注力するよりもベンチャー企業との提携や連携を積極的に行う方が重要なのではないかと思う。ベンチャー企業のプロダクトを取り入れ、後にその企業が伸びたころで増資・買収を検討するというのが良いと思う。メインでやるべきは、相手から何をもらえるかではなく、ビジネス上での繋がりを双方で重視する活動に専念する方が大事なのではないかと思う。   2014.9.15